
ウォーターハンマーの原因と対策|症状の切り分けと防止器の選び方
ウォーターハンマーの原因を、急閉弁・ポンプ停止・水柱分離・蒸気に分けて解説。発生タイミングによる症状診断、条件付きの水撃圧計算例、防止器の容量と設置条件、通常停止と停電停止の違い、現場で記録する項目を整理します。
長
長谷川一夫
機械設備設計部
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ウォーターハンマー(水撃現象)は、配管内の流速が急に変化し、圧力波が伝わる現象です。水栓を閉めた直後の打撃音、ポンプ停止時の衝撃など、発生するタイミングによって調べる箇所と対策が変わります。給水・冷温水設備では、流速と弁の動作、防止器の配置、停電時のポンプ・逆止弁の挙動を順に確認することが基本です。
ウォーターハンマーは圧力の上昇と低下で起こる
水はわずかに圧縮され、管も弾性変形します。急閉弁などで流れが急に減速すると圧力が変わり、その波が管内を伝わって分岐や水槽などで反射します。繰り返す圧力変動は、継手や支持部の緩み、漏水、弁・ポンプの損傷につながることがあります。
ポンプ停止後などに圧力が大きく下がり、液体の飽和蒸気圧に達すると、水柱が分離する場合があります。その後に水柱が再結合して、大きな圧力上昇を起こすこともあります。圧力上昇と水柱分離による水撃の違いは新明和工業の用語解説でも説明されています。
段階 | 水柱分離を伴う場合の概念 | 確認すること |
|---|---|---|
1 | ポンプ停止→流れを保とうとする水の慣性 | ポンプの減速特性、管路の高低差 |
2 | 圧力低下→蒸気空洞の発生→水柱分離 | 高所などの最低圧力、液温 |
3 | 水柱の戻り・再結合→圧力上昇 | 最大圧力、逆止弁、サージ対策 |
管路内の混入空気や空気溜まりも圧力変動に影響しますが、水柱分離とすべて同じ現象ではありません。「コンコン」という音だけで原因を決めず、弁の振動、支持不良、熱伸縮による音も切り分けます。
発生するタイミングから原因を切り分ける
症状・発生時点 | 主な原因候補 | 調べる項目 | 対策の方向 |
|---|---|---|---|
水栓や電磁弁を閉じた直後 | 急閉鎖による流速変化 | 使用圧力、流量、閉止時間、管径・長さ | 流速・閉止特性の改善、適切な水撃防止器 |
ポンプを停止した直後 | 圧力低下、逆流、逆止弁の急閉 | 通常停止と停電の違い、弁の動作、最低・最高圧力 | 系統に合う逆止弁、制御、サージ対策 |
通水中に連続して鳴る | 弁のチャタリング、気体混入、支持部の振動等 | 音の位置、弁前後差圧、流量、空気抜き、固定状態 | 原因部品・配管条件を個別に改善 |
蒸気供給開始や加熱中 | ドレンの衝突、蒸気の急凝縮 | 滞留ドレン、勾配、トラップ、供給・排出条件 | 蒸気系統としてドレン排出を改善 |
自動水栓、洗濯機の給水弁、洗浄装置などは、同時使用時の流量と閉止タイミングも確認します。器具選定時の条件は自動水栓・非接触水栓の設計と合わせて整理すると、設置後の対応を減らせます。
水撃圧の概算は前提条件をそろえる
単純な管路で流速が急変する場合の基本式が、ジューコフスキーの式です。流速変化に伴う圧力変化は、Δp=ρaΔvで表します。ρは液体密度[kg/m³]、aは液体を満たした管路の圧力波速度[m/s]、Δvは流速変化[m/s]で、結果の単位はPaです。KSBの水撃解説に式と考え方が示されています。
条件を仮定した計算例
密度1,000kg/m³、波速1,000m/s、流速が1m/sから急に0になると仮定すると、圧力上昇分は1,000×1,000×1=1,000,000Pa、すなわち1MPaです。これは通常の配管圧力に加わる変化分であり、配管の最終圧力そのものではありません。
波速は管材・肉厚・拘束条件・液温・混入空気などで変わります。また急閉の判断には、単純な水槽・管・弁のモデルで圧力波が往復する時間2L/aと、流速が変化する時間の関係を考えます。L=50m、a=1,000m/sなら往復時間は0.10秒ですが、この値を全系統共通の安全な閉止時間として使うことはできません。
分岐、複数ポンプ、弁の閉止特性、水柱分離がある系統は、反射や再結合で最大・最低圧力が変わります。上の式だけで機器耐圧や防止器容量を決めず、必要に応じて過渡解析を行います。式の適用範囲はKSBの水撃技術資料で確認できます。
配管設計でできる予防
まず設計流量に対して管径が小さすぎないかを確認します。必要以上の流速や給水圧力を抑えることは有効ですが、特定の流速以下なら水撃が発生しないという境界はありません。1.5〜2.0m/sなどの計画目安も、用途・騒音・管材・機器条件と組み合わせて扱います。流量と管径の関係は給水管径の決定方法を参照してください。
長い管路の末端に急閉弁がある場合は、弁の閉止特性と防止器を設計段階で検討します。不要な行き止まり、空気が滞留しやすい高低差を減らし、適切な空気抜きと支持を計画します。支持を強くするだけでは圧力変動そのものを解消できないため、発生源への対策も必要です。
水撃防止器とエアチャンバーの選び方
エアチャンバーは空気の圧縮性を利用する緩衝部です。水と空気が直接接する単純な方式では、空気が水に溶けて緩衝能力が低下するため、保守方法を確認します。ピストン・ベローズ・ダイヤフラムなどで気体と水を分ける水撃防止器もあり、使用条件と構造は製品ごとに異なります。
選定項目 | 確認内容 |
|---|---|
適用流体・温度 | 飲用水・温水等への適合、使用温度範囲 |
圧力 | 通常圧力、想定過渡圧力、製品の許容条件 |
管路・弁の条件 | 管径、配管長、流量・流速、急閉弁の数と動作 |
容量・個数 | メーカー選定表や計算資料で決定。接続口径だけで選ばない |
設置位置・保守 | 急閉弁への近接、取付方向、点検・交換空間、必要な保守 |
急閉弁にできるだけ近い配置が基本ですが、分岐や複数器具ではメーカーの配置条件を確認します。例えばヨシタケWP-1にも適用流体・圧力・温度・最大流速が定められています。ある製品の条件を別製品や配管全体の設計基準として転用しないことが大切です。
ポンプの通常停止と停電停止は分けて検討する
通常停止では、インバータによる減速や弁の動作時間を調整して流速変化を緩やかにできます。ただし、電源を失う停電時に同じ減速ができるとは限りません。ポンプの回転慣性、管路の高低差、逆流速度、逆止弁の閉止挙動まで含めて検討します。
逆止弁は一律に「ゆっくり閉じる形式がよい」とは言えません。逆流が大きくなる前に閉じる必要がある場合もあり、系統と弁の動特性の組合せで選びます。必要に応じてサージタンク、圧力吸収・調整装置、回転慣性の対策などを比較します。荏原の水撃解析では、ポンプ・弁・タンクの特性や逆止弁のスラミングを含めた検討が紹介されています。
定常運転の揚程・流量と停止時の過渡圧力は、それぞれ確認する項目です。前提となる選定はポンプの揚程計算とNPSHで整理しています。
蒸気配管の水撃はドレン対策から考える
蒸気系統では、高速で運ばれたドレンの衝突と、蒸気が急凝縮してドレン同士が衝突する現象を区別します。後者は、弁をゆっくり操作するだけでは防げない場合があります。滞留ドレンを生まない配管、適切なスチームトラップ、排出先の圧力、暖管方法を確認します。仕組みと対策はTLVの蒸気配管の水撃解説が参考になります。給水用防止器をそのまま蒸気系統に適用しません。
現場調査と設計で残す確認事項
- 発生位置・時間・頻度と、直前の水栓・弁・ポンプの動作を記録する。
- 系統図、管径、長さ、管材、設置高低差、機器・弁の型式を確認する。
- 通常圧力だけでなく、現象の速さを捉えられる測定方法で圧力変動を確認する。
- 音の原因と対策の対象を決め、防止器・制御・逆止弁の条件を照合する。
- 対策後は同じ使用条件で再測定し、通常停止・停電想定など必要な条件で性能を確かめる。