サーバーと監視装置への電源供給を支えるUPSのイラスト
設備設計ナレッジ電気設備

UPS(無停電電源装置)とは|建築設備での役割・給電方式と容量選定

UPSの役割、常時商用・ラインインタラクティブ・常時インバータ方式の違いを解説。kVAとkWの両方による容量確認、バックアップ時間、発電機との連携、電源・空調・保守の設計ポイントを作例で整理します。

猪

猪狩理

設備設計士

公開日
更新日

UPS(無停電電源装置)は、停電や電源異常が起きたときに蓄電池などから電力を供給し、機器の運転継続や安全な停止を支える装置です。建築設備では、中央監視、ネットワーク、入退室管理、サーバー、制御装置などの電源計画に関わります。

選定は、出力容量だけで決まりません。負荷が許容する瞬断、必要な運転時間、設置環境、保守時の給電方法を決めてから、給電方式・容量・蓄電池を組み合わせます。

UPSと非常用発電機の役割を分ける

UPSは、短い電源異常を補償したり、停止処理の時間を確保したりする役割を担います。発電機を備える場合は、始動・電源切替が完了するまでの橋渡しにも使われます。発電機があるからUPSが不要、UPSがあるから長時間運転できる、とは限りません。

目的

決めるべき条件

確認する結果

瞬低・瞬断で制御を止めない

負荷の許容電圧と許容中断時間

選定方式の切替時間・出力品質が合うか

サーバーを安全に停止する

異常判断、通知、処理終了、停止に要する時間

負荷と電池の条件を含め必要時間を確保できるか

発電機の起動までつなぐ

始動・切替時間、電圧・周波数、再充電

発電機との接続条件とUPS入力の許容範囲が合うか

運転を長く継続する

対象負荷、継続時間、燃料・蓄電池、空調

電源だけでなくシステム全体が継続できるか

市販UPSを設けただけで、消防用設備等に必要な法定非常電源の要件を満たすわけではありません。対象設備の法令と必要な認定・容量・時間・配線等を別に照合します。法規の整理は非常電源の法的要件も参照してください。

三つの給電方式の違い

方式

通常時の給電

選定の着眼点

常時商用給電

基本的に商用電源から供給し、異常時に蓄電池側へ切り替える

切替時の短い中断を許容できるか。バックアップ時の波形も確認

ラインインタラクティブ

商用給電を基本に、一定範囲の電圧変動を補正する

電圧調整範囲と切替時間が負荷に適合するか

常時インバータ給電

整流・インバータを介して給電する

通常の停電切替で無瞬断が必要な負荷。損失・発熱も比較

方式の原理はユタカ電機製作所「UPS方式の違い」を参照しています。「常時インバータ」という表示だけで、故障時・バイパス切替時・省エネ運転時まで一律に無瞬断と判断しないようにします。採用する運転モードごとの仕様が確認対象です。

また、負荷側が正弦波出力を要求するか、突入電流や誘導性負荷の制限がないかも調べます。モーターやヒーター等を、情報機器向けUPSへ容量だけを見て接続するのは避け、対応可否をメーカーに確認します。

容量はkVAとkWを両方確認する

皮相電力Sの単位がVA・kVA、有効電力Pの単位がW・kWです。負荷の力率をPFとすると、S=P÷PFで換算できます。WとVAを混ぜて合計せず、それぞれ集計します。力率が不明なら一律に推定せず、負荷機器の資料・メーカー回答を取得します。

山洋電気の選定条件も、UPSの出力容量がVAとWの両合計を上回ることを示しています。単位の意味はkVA・kW・力率の基礎で確認できます。

計算例|合計3.0kW、力率0.9の負荷

以下は架空の候補比較です。バックアップ対象の合計が3.0kW、総合力率0.9、入出力電圧と相数は適合していると仮定します。皮相電力は3.0÷0.9≒3.33kVAとなります。

架空の候補

定格出力

容量段階の判断

A

5kVA・2.5kW

kVAは足りるが、3.0kWを供給できないため不可

B

3kVA・3kW

3.33kVAに足りず、余裕もないため不可

C

5kVA・4.5kW

両定格を上回るため候補。次に時間・過渡特性等を確認

Cの負荷率はkW側で約67%、kVA側で約67%です。ただし「負荷率67%なら何分動く」とは決まりません。将来増設は予定機器ごとにW・VAを加え、起動時の電流とUPSの過負荷耐量も照合します。根拠のない一定倍率だけで確定しないことが大切です。

バックアップ時間は負荷条件付きの特性で決める

蓄電池容量だけを電力で割った計算は、UPSの損失、放電特性、電池の終止条件等を十分に表しません。必要時間は、メーカーのバックアップ時間表・特性曲線で、接続する負荷と電池構成を指定して確認します。

たとえば、停電判断30秒、停止処理4分、確認と給電終了まで1分30秒なら、必要な動作時間は合計6分です。これは必要時間を分解する架空の例であり、初期状態で6分動く機種をそのまま採用する意味ではありません。

温度と経年劣化で時間が短くなるため、交換直前の条件も含めて計画します。オムロンの選定ツールでは初期値と劣化を区別した選定の注意を示しています。余裕の取り方や交換判断は、採用機種の条件に合わせます。

電源・空調・保守の取り合いを設計する

設計分野

確認項目

起こりやすい見落とし

入力電源

最大入力電流、充電、保護器、端子・コンセント、接地

出力負荷の電流だけで一次側を決める

出力回路

分岐保護、短絡時の動作、負荷の波形・突入

インバータ給電時の保護協調を確認しない

発電機

入力許容範囲、充電を含む負荷、起動・切替

発電機容量とUPS容量だけで接続を決める

空調・建築

発熱、周囲温度、吸排気、重量、搬入、床・固定

停電時に空調だけ停止し室温が上がる

運用・保守

電池交換、保守バイパス、停止手順、監視通知

交換・点検時の負荷停止を想定していない

定格容量の確認に加え、突入・過電流や設置環境の注意は三菱電機の機種選定資料で確認できます。UPS損失と負荷機器の発熱を区別し、同じ部屋にあれば双方を室の発熱として見込みます。

シャットダウンまで確認して引き渡す

UPSを設置しただけでは、接続機器が自動的に安全停止するとは限りません。管理ソフト、通信、仮想環境、ネットワーク経路を含めて、通知と停止の順序を決めます。Schneider Electricの選定案内も、負荷・時間の確認と電源管理ソフトを併せて案内しています。

  • 停電時に継続する機器と、先に停止する機器を分けたか。
  • W・VA、許容瞬断、必要時間、将来増設を記録したか。
  • 劣化・温度を含む条件でバックアップ時間を確認したか。
  • 入力・出力・発電機・空調・監視の取り合いを図面に反映したか。
  • 復電時の再起動順序、電池交換、保守時の給電方法を定めたか。

資料確認日:2026年10月30日。作例の容量・所要時間は架空の条件です。実機選定では負荷側とUPS側の最新仕様を照合します。