
第一種換気と第三種換気の違い|仕組み・メリットと建物用途別の選び方
第一種換気と第三種換気の仕組み、室圧、熱交換との関係を解説。事務所・教室・便所・厨房での選定ポイント、給排気バランスの計算例、給気口・移送経路・保守の確認事項を整理します。
猪
猪狩理
設備設計士
- 公開日
- 更新日
第一種換気は給気・排気の両方を機械で行い、第三種換気は排気を機械で行い、給気口等から空気を取り入れる方式です。建築設備設計では、必要な外気量だけでなく、空気をどこから入れ、どの室を通し、どこへ排出するかで選定します。
第一種だから必ず熱交換付き、第三種だから給気の計画は不要、という理解は適切ではありません。事務所・店舗・学校等の非住宅建物を中心に、方式の違いと用途別の検討手順を説明します。
第一種・第二種・第三種の仕組み
方式 | 給気 | 排気 | 室圧の考え方 |
|---|---|---|---|
第一種 | 機械 | 機械 | 給排気量と経路で調整する |
第二種 | 機械 | 自然排気口等 | 周囲より正圧にしやすい |
第三種 | 自然給気口等 | 機械 | 周囲より負圧にしやすい |
分類と使い分けの基本は文部科学省「学校施設の換気設備に関する調査研究報告書」で確認できます。実際の室圧は、気密性、風、扉の開閉、ほかの給排気設備等にも左右されます。第一種という名称だけで、室内外が完全に同圧になるわけではありません。
第一種:屋外 → 給気ファン → 室内 → 排気ファン → 屋外
第三種:屋外・計画した給気経路 → 室内 → 排気ファン → 屋外
室内の空気を循環させるエアコンやサーキュレーターと、外気を取り入れる換気も区別します。循環風量が大きくても、必要な外気量が確保されているとは限りません。
第一種換気のメリットと注意点
給気・排気の双方を計画しやすく、外気の導入位置、ろ過、温度処理、熱回収等を組み合わせられます。窓を開けにくい事務所や教室、部屋ごとに換気を完結させたい場合に検討しやすい方式です。
一方、給気側・排気側の機器とダクト、電源、設置空間が必要です。フィルタが詰まったとき、片側のファンが停止したとき、便所や厨房の排気が追加されたときのバランスも考慮します。
- 給気口と排気口を近接させ過ぎず、室全体に空気が届く配置を検討する。
- 給気・排気の実風量を調整し、室間の必要な流れを確認する。
- フィルタ清掃と交換、機器更新のための点検・搬出空間を確保する。
非住宅の導入例はPanasonic「換気のおはなし オフィス・店舗編」も参考になります。方式の採用と合わせて、運転時間・在室人数・維持管理を計画します。
第三種換気のメリットと注意点
機械排気を中心とした構成で、臭気等が発生する室を周囲より負圧にする計画に使われます。便所などから汚れた空気が隣室へ流れ出すことを抑えたい場合は、清浄側から汚染側へ向かう空気の流れを検討します。
ただし、排気ファンのカタログ風量だけでは換気量を確定できません。給気口、ドアガラリ、移送経路、ダクトの抵抗が大きいと、想定した空気が入らず、排気量も不足する可能性があります。
- 給気を外壁から取るのか、隣接する空調室から移送するのかを明示する。
- 閉じた扉の状態でも必要な空気が通るか、開口の性能で確認する。
- 外風、騒音、雨、虫、粉じん、冬季の冷気等を考慮する。
- 厨房等の大きな排気を運転したとき、建物全体の給気が不足しないか確認する。
「窓を少し開けて使う」ことが前提なら、通常運用でその状態を維持できるかが問題になります。給気口を使う計画では、家具や改修後の内装で塞がれない位置も必要です。給気経路を確保する基本は三菱電機の換気解説も参照できます。
熱交換付きかどうかは別に選ぶ
第一種換気は給排気の方法による分類で、熱交換器の有無を意味しません。熱交換型では排気から熱を回収して外気処理負荷を減らせますが、必要な換気量、温湿度条件、交換効率、消費電力、保守費を比較して採用します。
排気の性質によっては、一般の熱交換換気ユニットへ通せない場合があります。厨房の油煙や特殊なガスを含む排気等は、採用機器の適用範囲と汚染移行の条件を確認します。全熱交換を採用しても、外気量や除湿能力の確認が不要になるわけではありません。詳細は外気処理と全熱交換器で確認してください。
建物用途別の選び方
用途・室 | 検討の出発点 | 方式選定で重視する条件 |
|---|---|---|
事務所・会議室 | 第一種による計画給排気等を比較 | 人数変動、外気量、給気温度、騒音、フィルタ管理 |
教室・講義室 | 部屋単位の換気や既存経路を比較 | 人数、授業中の騒音、冷気、窓開けの運用、清掃 |
便所・清掃関連室 | 機械排気と給気・移送経路を計画 | 臭気の流出防止、扉閉鎖時の通気、周囲との圧力関係 |
厨房 | フード排気と補給空気を一体で設計 | 捕集、熱・油煙、燃焼機器、客席との流れ、給気不足 |
清浄度・圧力管理が必要な室 | 専用の給排気・圧力制御を検討 | 汚染の方向、ろ過、扉、監視、故障時の状態 |
この表は検討の入口で、用途から方式を一律に指定するものではありません。一つの建物で、執務室は第一種、便所は第三種を組み合わせることもあります。その場合も、それぞれを別計算で終えず、建物全体の空気収支を照合します。
風量バランスの例|第一種でも負圧になる
架空の小さな室で、機械給気200㎥/h、機械排気250㎥/hとします。定常状態の単純な空気収支では、差の50㎥/hがほかの経路から流入する必要があります。
項目 | 仮定値 | 確認すること |
|---|---|---|
機械給気 | 200㎥/h | フィルタ・ダクトを含む実風量か |
機械排気 | 250㎥/h | 必要量と運転点を満たすか |
不足分 | 250-200=50㎥/h | 隣室・給気口等、どこから入れるか |
給排気とも機械でも、差を埋める流入経路が必要です。経路が不足すれば、計画風量のまま安定するとは限りません。臭気のある室から吸い込んでいないか、扉が重くならないかも確認します。
逆に第三種で排気250㎥/hを計画するなら、それに見合う給気経路が必要です。必要開口は寸法だけで決めず、採用するガラリ・給気口の圧力損失と許容する差圧等で確認します。この差50㎥/hだけから室圧を何Paと算定することはできません。
必要換気量は方式を選ぶ前に確定する
居室の通常換気、シックハウス対策、人数・CO2、臭気・発熱、燃焼や作業に必要な換気等は、目的と根拠を分けます。国土交通省の換気情報でも、通常の空気環境の維持とシックハウス対策を区別しています。住宅の0.5回/hという例を、すべての非住宅室の必要量へそのまま当てはめないようにします。
複数の基準を同時に満たすよう必要量と運転条件を整理してから、ファン・給気口・ダクトを選定します。計算の詳細は必要換気量の計算、法規の整理は換気設備の法的要件も参照してください。
方式決定・引渡し前のチェックリスト
- 各室の必要換気量と、その根拠・人数・運転時間を残したか。
- 給気・移送・排気の経路と、必要な圧力の向きを描いたか。
- 便所・厨房・特殊排気を含む建物全体の収支を照合したか。
- 扉閉鎖、フィルタ汚れ、部分運転でも必要量を確保できるか。
- 夏の高湿外気、冬の冷気、結露、騒音を検討したか。
- 実風量調整、室間の流れ、清掃・交換と運用説明を引渡しに含めたか。
資料確認日:2026年10月30日。用途別の例と風量例は一般的な検討を示すもので、実際の採用方式は現行法令・使用条件・機器性能に基づき決定します。