
ポンプの選定と揚程計算|全揚程の求め方・流量・NPSHと搬送動力を解説
ポンプの選定と揚程計算を、空調設備におけるポンプの役割、実揚程と全揚程の違い、全揚程の求め方、搬送熱量と温度差からの流量決定、特性曲線と運転点、NPSHと設置、インバータによる変流量制御まで、建築設備設計の実務目線で解説します。冷温水配管の設計入門の記事とあわせてご覧ください。
ポンプは、冷温水や冷却水を循環させて熱を搬送する搬送設備の中心です。搬送動力は空調の消費エネルギーの大きな割合を占めるため、揚程と流量を適切に見積もることが省エネ設計の鍵になります。本記事では、ポンプの役割、全揚程の求め方、流量の決め方、特性曲線と運転点、NPSH(キャビテーション)、省エネ制御までを設計実務の目線で整理します。
空調設備におけるポンプの役割
空調設備のポンプには、冷水・温水を送る冷温水ポンプ、冷凍機と冷却塔をつなぐ冷却水ポンプ、給水・排水用のポンプなどがあります。いずれも、必要な流量を、配管や機器の抵抗(圧力損失)に打ち勝って送るために選定します。搬送動力は流量と揚程に比例するため、どちらも過大にしないことが省エネにつながります。
揚程とは|実揚程と全揚程
揚程はポンプが水を押し上げる能力を高さ(m)で表したものです。高位差に相当する実揚程と、配管・機器の抵抗に相当する損失揚程を合わせたものが全揚程です。受水槽から高置水槽へくみ上げるような開放系では実揚程が支配的ですが、冷温水のような密閉循環系では高位差が相殺され、配管抵抗が全揚程の中心になります。
全揚程の求め方
- 実揚程:吸込水面から吐出水面までの高位差。密閉循環系では実質ゼロとなる。
- 配管の摩擦損失:直管部の長さと管径・流速から求める。長いルート・高流速ほど損失が増える。
- 局部損失・機器抵抗:弁・継手・熱源機器・熱交換器などの圧力損失を加算する。
- 全揚程=実揚程+配管の摩擦損失+局部・機器抵抗。余裕を見すぎると過大揚程となり搬送動力を無駄にする。
流量の決め方|搬送熱量と温度差
循環流量は、搬送すべき熱量を送り・戻りの温度差で除して求めます。温度差を大きく取る(大温度差送水)と、同じ熱量を少ない流量で搬送できるため、ポンプを小型化し搬送動力を削減できます。ただし、熱交換器の能力や末端機器の制御性とのバランスを確認します。
特性曲線と運転点(並列・直列)
ポンプの揚程-流量特性曲線と、配管系の抵抗曲線の交点が実際の運転点になります。選定点が効率の良い領域に入るよう確認します。流量を稼ぎたい場合は並列、揚程を稼ぎたい場合は直列としますが、並列運転では抵抗曲線の形状により台数分の流量が得られない点に注意します。
NPSH(キャビテーション)と設置
ポンプ入口の圧力が低すぎると、水が気化してキャビテーション(気泡の発生と崩壊)を起こし、騒音・振動や羽根車の損傷を招きます。利用可能NPSHが必要NPSHを上回るよう、ポンプの設置高さや吸込配管の抵抗を計画します。受水槽・緩衝タンクとの位置関係も確認します。
省エネ設計|インバータ・変流量制御
ポンプをインバータ化し、負荷に応じて回転数を絞る変流量制御(VWV)は、搬送動力を大きく削減できます。回転数を下げると動力はおおむね回転数の3乗に比例して下がるため、部分負荷での省エネ効果が大きい。大温度差送水と組み合わせるとさらに効果的で、省エネ基準の搬送動力評価にも直結します。
設計チェックリスト
- 開放系・密閉系を区別して実揚程を正しく見積もったか
- 摩擦損失・局部損失・機器抵抗を加算して全揚程を求めたか
- 搬送熱量と温度差から流量を決め、大温度差の可否を検討したか
- 運転点が効率の良い領域に入り、NPSHに余裕があるか
- インバータによる変流量制御で部分負荷の省エネを図ったか
ポンプは配管・熱源と一体で計画する搬送設備です。配管径や圧力損失の基礎は冷温水配管の設計入門を、熱源との関係はチラーの選定を、冷却水系統の放熱は冷却塔の設計・選定をあわせてご覧ください。