
力率改善とは|進相コンデンサの容量計算と設置のポイント
力率改善用の進相コンデンサ容量を、負荷kW・改善前力率・目標力率から計算する手順を解説。100kWの計算例、標準容量の選び方、軽負荷時の進み力率、設置位置と自動制御、直列リアクトル・高調波・更新時の確認項目を整理します。
猪
猪狩理
設備設計士
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力率改善は、負荷が必要とする遅れ無効電力を進相コンデンサ等で補い、受電点や幹線を流れる電流・皮相電力を抑える方法です。設計では、実際の負荷と運転時間に合う容量・設置位置・制御を選びます。
コンデンサを大きくすればよいわけではありません。昼間に適した容量でも、夜間や休日には過補償で進み力率となることがあります。ここでは正弦波・三相平衡負荷を仮定した容量計算から、実設備の選定で追加確認する事項まで説明します。
最初に、どの場所の力率を改善するかを決める
設置する位置 | 主な狙い | 確認すること |
|---|---|---|
受電点・高圧母線側 | 受電設備全体の力率をまとめて改善 | 変圧器や負荷の無効電力、受電点の計測、段階制御 |
低圧主幹・分電盤側 | 対象幹線を含めた上流側の電流を低減 | 対象負荷の運転、幹線条件、高調波、開閉方式 |
適用可能な個別負荷の近傍 | その負荷までの上流回路を改善 | 負荷と連動する開閉、機器メーカーの条件、過大容量 |
同じコンデンサ容量でも、設置位置より下流の幹線電流が必ず減るわけではありません。例えば高圧側に設置したコンデンサだけでは、低圧側の個々の電動機回路を流れる電流を直接小さくできません。どの区間の電流・損失を減らす計画かを単線結線図に示します。
kW・kVAと力率の基礎はkVA・kWの違いと換算を参照してください。
進相コンデンサの必要容量を求める式
有効電力P[kW]が一定で、改善前の遅れ力率をcosφ1、目標力率をcosφ2とすると、必要な補償容量Qc[kvar]は、改善前後の無効電力の差から求めます。
Qc = P ×(tanφ1 − tanφ2)
力率の値から計算する場合は、次の形にできます。
Qc = P ×{√(1/cos²φ1 − 1)− √(1/cos²φ2 − 1)}
80%は0.80として代入します。Pに入れるのは対象とした負荷の有効電力で、変圧器の定格kVAや電動機の軸出力kWを無条件に入れるものではありません。受電点を対象にする場合は、変圧器の励磁分等を含む測定範囲とも整合させます。算定方法は三菱電機の進相コンデンサ設備資料等で確認できます。
計算例:100kW・力率80%を95%へ改善する
説明用に、三相200V、有効電力100kW、改善前の遅れ力率0.80、目標0.95を仮定します。この例では電圧と有効電力を一定とし、高調波・不平衡・機器損失は別扱いとします。
項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
改善前の無効電力 | 100 × √(1/0.80² − 1) | 75.0kvar |
目標状態の無効電力 | 100 × √(1/0.95² − 1) | 約32.9kvar |
必要な補償容量 | 75.0 − 32.9 | 約42.1kvar |
改善前の皮相電力 | 100 ÷ 0.80 | 125.0kVA |
目標状態の皮相電力 | 100 ÷ 0.95 | 約105.3kVA |
電流の概算はI=P×1000÷(√3×V×力率)です。この条件では約361Aから約304Aへ減ります。ただし有効電力を100kWのまま比較しているため、機器の消費電力量が同じ割合で減る計算ではありません。実際の省エネ効果は、対象区間の電流減少による損失変化等から評価します。
標準容量は、改善後の力率まで再計算して選ぶ
42.1kvarという計算結果に対して、仮に40kvarと50kvarの設備容量を比較します。残る無効電力をQ=75−Qcとすると、改善後の力率はP÷√(P²+Q²)で求められます。
仮定した設備容量 | 残る遅れ無効電力 | 改善後力率 |
|---|---|---|
40kvar | 35kvar | 約94.4%。この例の目標95%には届かない |
50kvar | 25kvar | 約97.0%。軽負荷時の運用を続けて確認 |
表は算定手順を示す例で、特定製品を選定したものではありません。直列リアクトルと組み合わせる設備では、コンデンサ単体の銘板容量と、系統に対する設備容量の扱いをメーカー資料で照合します。定格電圧・周波数や組合せ条件を無視して、数値だけ近い機器を採用しないようにします。
軽負荷時の過補償を確認する
同じ設備で夜間の有効電力が20kW、補償前力率が0.80なら、遅れ無効電力は15kvarです。昼間用の50kvarを接続したままにすると、差引きで35kvarの進みとなります。軽負荷でも昼間と同じ容量を投入し続ける計画は再検討が必要です。
仮想の運転状態 | 負荷の遅れ無効電力 | 補償の例 | 残る無効電力 |
|---|---|---|---|
昼間100kW・0.80 | 75kvar | 50kvar | 25kvar遅れ |
夜間20kW・0.80 | 15kvar | 10kvar | 5kvar遅れ |
この例では運転状態に合わせた段階投入が考えられますが、実設備の段数や各段容量は測定した負荷変動、開閉頻度、制御の不感帯・投入遅延などから決めます。力率計の一時点の値だけでなく、kW・kvar・遅れ進みの時間変化を取得してください。
過度の進み力率や自動力率調整の考え方は日本電気技術者協会「力率改善と経済効果」で解説されています。
直列リアクトル・高調波・開閉器を組み合わせて確認する
コンデンサは、高調波を含む系統との組合せによって過電流や共振などの問題が起こり得ます。直列リアクトル、放電装置、開閉器、保護装置まで含む設備として、設置条件とメーカー指定を確認します。リアクトルを付ければ、どのような系統でも高調波対策が完了するわけではありません。
インバータや整流器の負荷では、電流のひずみを含む総合力率と、基本波の位相差による力率を区別します。コンデンサだけで低い総合力率をすべて改善できるとは限りません。インバータの出力側への接続などは機器の取扱説明書に従い、通常の誘導電動機と同じ扱いで追加しないでください。
機器への具体的な注意事項はニチコンの電力用コンデンサ資料、系統全体の評価は高調波対策の設計と合わせて確認します。
設計・更新時の確認表
段階 | 記録する内容 |
|---|---|
現状把握 | 計測位置、電圧、kW・kvar・力率、休日・夜間を含む負荷変動 |
容量計算 | 目標力率、対象負荷、変圧器励磁分の扱い、標準容量での再計算 |
機器選定 | 定格電圧・周波数、設備容量、リアクトル、保護・放電・開閉条件 |
制御 | 計測用CTの位置・極性、投入段数、不感帯、再投入時間 |
設置・保守 | 換気、周囲温度、点検・搬出空間、停電作業と残留電荷への対処 |
更新後 | 負荷運転・停止時の遅れ進み、電圧・電流・高調波、制御動作 |
受変電設備の容量検討は需要率・力率と変圧器の選定例へつながります。力率改善で設備に余裕が生じても、遮断容量、幹線、保護協調、電圧などの条件を再確認せずに負荷増設を決めないようにします。
参考資料
資料確認日:2026年10月30日。数値例は仮定した正弦波・平衡負荷の計算です。実設備は測定結果と採用機器の条件で検討します。