給排水衛生設備とは?対象範囲・給水/給湯/排水通気/衛生器具の全体像と設計の流れを解説
設備設計ナレッジ衛生設備

給排水衛生設備とは?対象設備と設計の流れ・確認項目

給排水衛生設備を、給水・給湯・排水・通気・衛生器具の役割と水の流れから解説。現地調査、方式・容量の検討、配管計画、図面と計算書の作成までを整理し、各分野の設計記事につながる入口として全体像を紹介します。

長

長谷川一夫

機械設備設計部

公開日
更新日

給排水衛生設備は、建物で必要な水や湯を使えるようにし、使用後の水を衛生的に排出する設備です。給水・給湯・排水・通気・衛生器具を一体で計画します。設計は器具を選ぶところから始めるのではなく、建物の用途・人数、地域の給水条件、排水先、維持管理の条件を調べ、方式・容量・配管経路を順に整えることが基本です。

給排水衛生設備に含まれるもの

給排水衛生設備は、配管だけを指す言葉ではありません。水槽、ポンプ、給湯機、排水槽、衛生器具、弁や制御装置なども含みます。設計図書や工事区分によって、消火設備・ガス設備・水処理設備を同じ担当が扱うこともありますが、対象とする流体、法令、責任範囲はそれぞれ確認します。本記事では、水を供給・使用・排出する系統を中心に説明します。

分野

主な役割

代表的な設備

設計で決めること

給水

必要な量・圧力で水を届ける

給水管、受水槽、ポンプ、弁

給水方式、流量、圧力、管径、水質管理

給湯

用途に合う温度・量の湯を供給する

給湯機、貯湯槽、給湯・循環管

方式、加熱能力、貯湯量、湯待ち・熱損失

排水

使用後の水等を排出する

排水管、桝、排水槽、排水ポンプ、阻集器

排水の区分、放流先、管径、勾配、必要な処理

通気

排水管内の空気の流れを確保し、封水を守る

通気管、通気立て管、通気口

方式、接続位置、口径、外部への開放位置

衛生器具

手洗い・洗浄・排せつ等に使う

大便器、小便器、洗面器、流し、水栓

必要数、配置、使いやすさ、接続・清掃条件

器具数の不足を配管の太さで解決することはできず、必要な圧力が届かなければ選んだ水栓の性能も出せません。設備ごとの検討結果を相互に確認する必要があります。

水が入り、使われ、排出されるまで

系統

流れを示す概念図

読み方

給水

水道 → 直結、又は受水槽・ポンプ等 → 建物内給水管 → 衛生器具

敷地条件に合う給水方式で量と圧力を確保

給湯

給水から分岐 → 給湯機・必要な貯湯槽 → 給湯管 → 湯を使う器具

必要な系統に湯を供給。循環を設ける場合は戻り系統も計画

排水

器具 → トラップ → 排水枝管・立て管 → 屋外排水 → 公共下水等の適切な放流先

用途に応じ、阻集器や排水槽等を組み込む

通気

排水系統 ↔ 通気管 ↔ 適切な位置の通気口

主に空気が出入りする経路。通常の排水経路とは分けて読む

雨水

屋根・敷地等 → 雨水排水系統 → 地域の条件に合う排水先等

汚水と同じ接続先と決めつけない

上表は役割を理解するための概念図です。全ての建物に受水槽や貯湯槽が必要なわけではありません。雑用水を利用する建物では、飲用の上水と系統を区別し、誤接続や逆流による汚染を防ぎます。実際の接続条件は事業者の基準・協議内容と設計図書で確認します。

給水と給湯の違い

給水には、配水管の圧力を利用する直結直圧、ポンプで補う直結増圧、いったん水槽に受ける方式等があります。建物規模だけでなく、配水管の条件、水使用の変動、断水時の必要機能で比較します。具体的な選び方は給水方式の選定フローを参照してください。

給湯は、中央でまとめて作るか、使用場所の近くで作るかによって配管や機器構成が変わります。使用時間帯、湯待ち、放熱、やけど防止、貯湯部の衛生管理も検討します。加熱能力と貯湯量の考え方は給湯設備の設計ガイドで詳しく説明しています。

排水と通気はセットで計画する

排水管は、排水の性状と流量、勾配、接続条件に合うよう計画します。汚水・雑排水を建物内で分離するかは用途や衛生条件等で検討し、全ての建物で常に別管にするとは限りません。雨水系統や公共下水の分流・合流の区分も別に確認します。寸法の検討は排水管径と勾配の決め方につながります。

トラップは水をためた封水で臭気等の侵入を抑える部分です。通気は排水時の圧力変動による封水の損失を防ぐために設けます。通気管を太くすれば全ての不具合が解決するわけではなく、方式・接続位置・配管経路を確認します。詳しくは通気管の設計ガイドをご覧ください。

調査から設計までの進め方

  1. 用途と利用条件を整理する:利用人数、使用時間帯、厨房・浴室等の用途、必要な水質、将来変更、断水時に残す機能を確認する。
  2. 敷地と外部接続条件を調べる:給水の圧力・引込条件、下水道の接続位置・高さ、排除基準、既設設備の状態を確認し、必要な協議を行う。
  3. 器具と方式を決める:必要器具数・配置、給水・給湯方式、排水の区分、通気方式を検討する。
  4. 容量・管径・機器を選ぶ:各計算の目的に合う流量や負荷を求め、圧力損失、加熱・貯留能力等を照合する。
  5. 経路と納まりを調整する:配管スペース、勾配、構造・防火区画との取り合い、点検・清掃・更新の作業空間を確認する。
  6. 図書と管理条件をまとめる:図面・計算書・機器表の整合を確認し、試験・試運転と引継ぎの事項を明確にする。

この流れは一方向ではありません。配管の経路が長くなれば圧力損失を見直し、器具配置が変われば負荷と排水経路を再確認します。改修では、既存図面と現地が一致しているかを確かめてから設計条件を確定します。

器具数・水量・流量を同じ計算で決めない

必要器具数、一日使用水量、瞬時流量、排水負荷は別の検討項目です。器具負荷単位だけから全ての容量を決めると、使用人数やピーク時の同時使用、貯留・加熱の時間条件を取り落とします。

検討する項目

主な入力・考え方

決定につながるもの

必要器具数

建物用途、利用人数、使用の集中、利用者への配慮

便器・洗面器等の種類、数、配置

一日使用水量

利用人数や用途別の使用量、稼働日・時間

水使用の規模把握、貯留計画等の前提

瞬時・時間最大の給水量

同時使用と時間変動。選ぶ機器・方式に対応する値

給水管、ポンプ、水槽等の容量検討

給湯負荷

使用湯量、温度、集中時間、加熱・貯留の運用

給湯機の能力、貯湯量、配管

排水負荷

器具の排水特性、接続数、管の配置・勾配

排水管径、排水槽・ポンプ等

例えば国土交通省の建築設備設計基準(令和6年版)では、日給水量、給水ポンプ、給湯、排水管で算定の考え方を使い分けています。これは官庁施設の実施設計のための基準であり、民間を含む全ての施設に同じ方法が一律に法定されているという意味ではありません。適用する基準、自治体・事業者との協議、建物固有の使用条件を確認します。

器具の使いやすさ、清掃性、非接触水栓の採否等は容量計算だけでは決まりません。選定の詳細は衛生器具設備の設計ガイドにまとめています。

設計で作る図面・計算書と引継ぎ資料

成果物

確認できること

設計条件・方式検討資料

用途・人数・供給条件、採用方式とその理由

容量・管径等の計算書

入力条件、計算方法、選定容量、圧力・勾配の成立

平面図・系統図

器具位置、管の接続・経路、高さ、弁・点検箇所

機器表・仕様書

機器能力、電源・制御、使用圧力・温度、施工条件

試験・引継ぎ資料

試運転結果、操作方法、清掃・点検箇所、維持管理条件

計算書で選んだ管径と図面の表記、機器表の流量・圧力・電源が一致しているかを照合します。図面を初めて読む場合は、給排水設備図面の読み方で平面図と系統図の関係を確認すると、設備全体を追いやすくなります。

関連法令・協議と維持管理の確認項目

建築基準法、水道法、下水道法等に関わる事項を整理し、自治体の条例や水道・下水道事業者の基準、建物用途に応じた衛生管理条件を確認します。法令への適合は完成直前の確認事項ではなく、方式・接続・配置を決める初期段階から継続して確かめるものです。

  • 上水と雑用水等の系統が明確で、誤接続・逆流による汚染を防げるか。
  • 必要な量・圧力・温度が器具まで届き、排水・通気が成立しているか。
  • 油脂や土砂等を含む排水に、用途に合う処理・阻集を計画したか。
  • 水槽、弁、フィルター、阻集器等を清掃・点検できるか。
  • 機器停止・漏水・詰まり時に、影響範囲を限定し対応できるか。

給排水衛生設備の計画は、水を届ける機能と衛生的に排出する機能をつなぐ仕事です。まず全体の条件と系統を整理し、各分野の専門記事で計算・選定を深め、最後に図面と管理方法を一つの計画として整えましょう。

参考資料