
業務用パッケージエアコンとは?種類・選定・ルームエアコンとの違いを設計目線で解説
業務用パッケージエアコン(PAC)とは何かを、ルームエアコン・ビルマルチとの違い、室内機の形態、能力選定と馬力・同時使用の考え方、設備用パッケージの使い分け、配管・ドレン・電源などの設置計画、更新・耐用年数まで、建築設備設計の実務目線で解説します。空調方式の選定フローの記事とあわせてご覧ください。
長
長谷川一夫
機械設備設計部
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業務用パッケージエアコン(PAC)は、オフィス・店舗・小規模ビルなどで広く使われる個別分散方式の代表的な空調機器です。方式選定の段階では「個別かセントラルか」を検討しますが、実施設計では機器タイプ・室内機形態・能力選定を具体化する必要があります。本記事では、パッケージエアコンとは何か、ルームエアコンやビル用マルチ(VRF)との違い、選定と設置の実務ポイントまでを整理します。
パッケージエアコンとは
パッケージエアコンは、圧縮機・熱交換器などを組み込んだ室外機と、室内に設置する室内機を冷媒配管でつないだパッケージ型の空調機です。個別に発停できるためゾーニングがしやすく、熱源機器室や冷温水配管が不要なため、中小規模の建物では初期コスト・工期の面で有利になります。室外機1台に室内機1台のペア型が基本ですが、複数室内機を接続できるマルチ型もあります。
ルームエアコン・ビル用マルチとの違い
- ルームエアコン(RAC):家庭用で能力が小さく、単相電源が中心。業務用の連続運転や高負荷には向かない。
- パッケージエアコン(PAC):業務用で能力レンジが広く、三相電源が中心。天井カセット形など室内機形態が豊富。
- ビル用マルチ(VRF):1台の室外機に多数の室内機を接続し、冷媒量を可変制御。多室・中規模で個別制御性と省エネを両立できる。
室内機の形態と選び方
室内機は天井・天井裏・壁面・床置など設置場所と意匠に応じて選定します。
- 天井カセット形(4方向・2方向・1方向):意匠に優れ気流分布も良い。オフィス・店舗で主流。
- 天井吐出し(ダクト接続)形:隠蔽してダクトで送風。天井意匠を守りたい場合や外気導入との併用に向く。
- 天吊形・床置形:天井内に余裕がない場合や、体育館・工場など大空間のスポット空調に選ばれる。
能力選定の考え方|馬力・同時使用・接続能力
能力は熱負荷計算を基に選定します。業務用では能力を「馬力(馬)」で呼ぶことが多く、目安として1馬力は冷房能力約2.8kWに相当します。マルチ型では、室内機能力の合計と室外機の接続能力の比率(接続台数・容量比)に制限があり、部屋ごとの同時使用率を考慮して室外機を選びます。連続運転や高顕熱負荷の空間では、一般用ではなく年間冷房に対応した機種を検討します。
設備用パッケージの使い分け
一般的な店舗・事務所用に対し、大風量・高顕熱処理や年間冷房が必要な用途には設備用パッケージエアコンを選びます。サーバー室・電算室など発熱が大きく通年冷房が必要な空間や、外気導入量の大きい空間では、顕熱能力重視の機種選定がポイントになります。弱電・情報通信設備のサーバー室空調とも関連するため、電源・給排気・結露対策を合わせて検討します。
設置・配管・ドレン・電源計画
- 冷媒配管:配管長・高低差に機種ごとの制限がある。室外機と室内機の配置・ルートを早期に検討する。
- ドレン:結露水の排出勾配を確保し、こう配・滞留による漏水を防ぐ。ポンプアップの有無も確認する。
- 室外機:設置スペース・ショートサーキット・騒音・搬入・メンテスペースを確保する。
- 電源・制御:三相電源容量と分電盤回路、集中リモコン・中央監視との連携を計画する。
更新・耐用年数
業務用パッケージエアコンの法定耐用年数はおおむね15年で、実使用では使用環境により前後します。更新計画では、既存配管の流用可否、新冷媒への対応、運転しながらの工事(居ながら施工)の可否を確認します。更新時は省エネ性能の向上分をランニングコストで回収できるケースが多く、ライフサイクルコスト(LCC)での検討が有効です。
設計チェックリスト
- 方式選定(個別・セントラル・VRF)の上でPACを選んだ理由が明確か
- 熱負荷に基づき能力(馬力)と同時使用率を検討したか
- 室内機形態が天井意匠・気流・メンテに適しているか
- 冷媒配管長・ドレン勾配・室外機スペース・電源を確認したか
パッケージエアコンは方式選定の延長線上にある機器選定です。個別分散・セントラル・VRFの判断基準は空調方式の選定フローを、能力の前提となる負荷は熱負荷計算の基本を、制御ゾーンの切り方は空調ゾーニングの考え方をあわせてご覧ください。