
外気処理と全熱交換器の選定|熱回収率・外気負荷の計算例とDOASの違い
全熱交換器と外調機・DOASの役割を比較し、温度交換効率と全熱交換効率を計算例で解説。換気量、除湿能力、機外静圧、CO₂制御、外気冷房、保守の確認点から外気処理方式を選ぶ手順を整理します。
長
長谷川一夫
機械設備設計部
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外気を取り入れると、室内との温度差による顕熱負荷と、湿気の差による潜熱負荷が生じます。全熱交換器は排気から熱を回収してこの負荷を減らす装置です。熱を回収する機能と、給気を必要な温湿度まで処理する機能を区別して計画します。
全熱交換器・外調機・DOASの違い
設備・考え方 | 主な役割 | 確認する点 |
|---|---|---|
全熱交換器 | 給気と排気の間で顕熱・潜熱を回収する | 熱回収後の温湿度、漏れ・移行、送風抵抗 |
外調機 | 外気を冷却・加熱・除湿等して供給する | 処理能力、熱源、ドレン、制御 |
DOAS | 外気処理を室内の主な空調負荷処理から分離する考え方 | 外気の処理条件と室内機の役割分担 |
全熱交換器にコイル等を組み合わせた製品もあります。そのため機器名だけで判断せず、熱回収、冷却・加熱、除湿、加湿のどの機能を持つかを仕様書で確認します。熱回収だけでは、給気が必ず室温や目標湿度になるわけではありません。
必要換気量を先に決める
人数、室用途、発生する汚染物質、法的要件から換気量を求め、給排気のバランスを決めます。省エネのために換気量を減らす前に、満たすべき下限と制御条件を確認します。計算方法は必要換気量の計算を参照してください。
排気を熱交換に利用できるかは空気の性状によります。臭気、油煙、有害物質等を含む排気では、用途別の規制、機器の対応、漏れや物質移行を検討します。すべての排気を一般空調用の全熱交換器へ接続できるとは考えないでください。
温度交換効率と全熱交換効率の計算例
冷房時の給気側の温度交換効率を単純化して表すと、ηt=(外気温度−熱交換後給気温度)÷(外気温度−還気温度)です。風量や漏れ等の条件をそろえた例として、外気35℃、還気26℃、温度交換効率70%なら、給気温度は次のようになります。
35−0.70×(35−26)=28.7℃
温度の計算だけでは湿気の変化は分かりません。全熱交換効率は比エンタルピーの差で評価します。外気80kJ/kg(DA)、還気50kJ/kg(DA)、給気側の全熱交換効率60%と仮定すると、熱交換後は80−0.60×(80−50)=62kJ/kg(DA)です。
項目 | この例の意味 |
|---|---|
温度交換効率70% | 温度差に対する回収の割合。湿度の値ではない |
全熱交換効率60% | エンタルピー差に対する回収の割合 |
乾き空気流量0.5kg(DA)/s | 回収熱量は0.5×(80−62)=9kW |
9kWはこの瞬間の熱回収量で、電力削減量9kWや年間削減効果を意味しません。ファン電力、熱源効率、年間の外気条件、運転時間も含めて評価します。空気の状態量は空気線図の読み方で確認できます。
機器選定で照合する条件
- 設計風量での交換効率と給気・排気の風量比。
- ダクト・ガラリ・フィルター等に対する機外静圧。
- 夏季の除湿能力、冬季の加熱能力、低温時の運転条件。
- 騒音、漏れ・移行の扱い、必要なフィルター性能。
- エレメントやフィルターを取り出せる点検空間。
カタログの高い効率値だけで比較せず、対象風量・条件で照合します。抵抗が増えて実風量が不足すれば必要換気量を満たせません。外調機を組み合わせる場合は熱回収後の空気状態からコイル能力を検討し、外気負荷を二重に見込まないようにします。
CO₂制御と外気冷房の使い分け
CO₂濃度に応じた換気制御は在室人数の変動への対応に役立ちますが、CO₂以外の汚染物質やシックハウス対策等の条件を代替するものではありません。センサー位置・精度・設定値・最小風量と、排気側の追従を整理します。
外気冷房は、外気が室内負荷の処理に有利なときに利用します。温度だけでなく湿度やエンタルピーも確認し、熱回収を行う状態とバイパス運転を切り替える条件を定めます。ナイトパージも、湿気、防犯、騒音、翌朝の立上りを含めて検討してください。
省エネ評価と運用へつなげる
設計図書には換気量の根拠、外気・還気・給気の状態、機器能力、静圧、制御シーケンスを残します。完成時は給排気風量を確認し、フィルター清掃・交換と異常時の対応を管理者へ引き継ぎます。
省エネ基準と空調設計では、熱回収だけでなく熱源・搬送・制御を含めた検討を整理しています。室内の温湿度と必要換気を満たす条件から、省エネ効果を比較しましょう。
参考:Panasonic「外気処理ユニット」、三菱電機「外気処理ユニット」。計算例の効率・状態値は特定製品の性能値ではありません。採用機種の条件を確認してください。