
配線用遮断器(MCCB)の選び方|定格電流・遮断容量の決め方
MCCBの定格電流・AF・AT・遮断容量の読み方を解説。負荷と電線の保護、短絡電流、始動時の不要動作、選択遮断とカスケードを、32A回路の候補比較と図面の記載例で整理します。
猪
猪狩理
設備設計士
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配線用遮断器(MCCB)は、過負荷や短絡による大きな電流を遮断し、主に電線・電路を保護する機器です。選定では、普段流れる電流と、事故時に流れる短絡電流を別々に確認します。
「負荷が32Aだから40Aのブレーカー」と定格電流だけで決めると、電線を保護できない、始動時に落ちる、短絡事故を遮断できないといった問題が残ります。本記事では一般的な低圧回路を例に、仕様を決める順序を整理します。
MCCBの定格表示を読み分ける
表示 | 読み取る内容 | 混同しやすい点 |
|---|---|---|
AF(アンペアフレーム) | 遮断器のフレームの区分 | 100AFだから100A設定とは限らない |
AT・In等 | 定格電流や引外し設定に関する値 | その電流を少し超えた瞬間に必ず切れる値ではない |
定格使用電圧 | 使用できる電圧・交流直流等の条件 | 交流用を表示確認なしに直流へ流用しない |
極数・素子数 | 開閉する極と過電流を検出する要素の構成 | 線数だけでなく接地方式・中性線の扱いも確認する |
定格遮断容量 | 規定条件で遮断できる短絡電流 | Aで示す定格電流と、kAで示す遮断能力は別 |
たとえば100AF・60ATという表示なら、フレームと60Aの定格を読み分けます。電子式では設定可能な範囲もあるため、製品形式と実際の設定値を記録します。名称・選定項目は富士電機のブレーカー選定案内も参照してください。
定格電流は負荷と電線を一緒に確認する
一般的な電線保護では、負荷電流を流せることと、保護対象電線の許容電流を超える過電流を適切に遮断できることが必要です。初期検討では負荷電流 ≦ 遮断器の定格電流 ≦ 補正後の電線許容電流を確認の入口にします。
この関係だけで全回路を確定できるわけではありません。幹線・分岐、電動機回路等には個別の条件があり、電線の短時間耐量や遮断器の動作特性も照合します。日本配電制御システム工業会の解説も、許容電流との原則と例外を分けて示しています。
- 負荷電流:機器の最大運転条件、同時使用、将来増設を整理する。
- 電線許容電流:種類・サイズに加え、周囲温度、集合、布設条件を補正する。
- 遮断器の特性:盤内温度等の使用条件、過負荷・短絡の動作範囲を確認する。
ケーブル選定はCVケーブルの許容電流、長い配線は幹線設計と電圧降下も併せて確認します。電圧降下を満たすことと過電流保護の成立は、それぞれ別の判定です。
遮断容量は設置点の推定短絡電流で決める
短絡電流は、電源側の条件、変圧器容量・インピーダンス、配線長・サイズなどで変わります。変圧器の近くと、長いケーブルの先では同じとは限りません。単線結線図の各設置点で推定短絡電流を求め、該当する使用電圧での遮断容量と比較します。
値 | 意味 | 資料での確認 |
|---|---|---|
Icu | 定格限界遮断容量 | 推定短絡電流に対する遮断能力を確認する基本値 |
Ics | 定格使用遮断容量 | Icuとは試験責務が異なる。設計仕様の要求を確認 |
両者の違いは三菱電機「定格遮断容量Icu/Ics」を参照しています。定格一覧の別電圧の欄を読み違えないことも重要です。同じ形式でも電圧条件によって遮断容量が変わる場合があります。
また、大きい故障電流を遮断できるだけでなく、回路末端の故障で十分速く動作するかを確認します。最小側の故障電流と引外し特性、電線の熱的耐量を重ね、長い回路を見落とさないようにします。
選定例|32Aの負荷と50Aの電線許容電流
架空の一般負荷回路を考えます。最大負荷電流32A、補正後の電線許容電流50A、設置点の推定短絡電流10kAとします。電圧・極数・使用環境は全候補で適合し、今回は各遮断器単独で遮断能力を確保する条件です。
候補 | 定格電流/対象電圧のIcu | 初期判定 |
|---|---|---|
A | 40A/5kA | 電流の大小関係は満たすが、10kAを遮断できず不可 |
B | 60A/15kA | 遮断容量は満たすが、この条件では電線保護を満たさず不可 |
C | 40A/15kA | 両項目を満たす候補。動作特性と保護協調を追加確認 |
Cを選ぶ段階でも、温度補正、負荷の始動、電線の短絡耐量、端子の適合を確認します。この作例は大小関係を説明するもので、特定の40A品を推奨するものではありません。
始動・突入電流は動作特性曲線に重ねる
モーター、変圧器、電源装置などは、通常運転より大きな電流が一時的に流れる場合があります。運転電流だけで選ぶと不要動作し、不要動作を避けるため定格を上げるだけでは電線保護が崩れるおそれがあります。
たとえば運転電流20A、始動時120Aが2秒続く架空の負荷なら、120A・2秒の点と、始動中の電流変化をメーカーの曲線へ重ねます。これは遮断器選定を完結させる数値ではなく、電流と時間の情報をセットで渡す例です。冷状態・熱状態や反復起動の条件も照合します。
オリエンタルモーターのFAQも、突入電流で不要動作しない特性の検討を案内しています。電動機の過負荷保護はサーマルリレー等との分担も確認し、一般の電線保護と同じ倍率だけで決めないようにします。
選択遮断とカスケードは目的が違う
選択遮断は事故点に近い遮断器を動作させ、健全な回路の停電を抑える考え方です。カスケードは上位器の支援も利用して、組合せとして短絡を遮断する考え方で、上位側も動作して停電範囲が広がる場合があります。
上位が100A、下位が40Aだから選択遮断が成立する、とは判断できません。動作特性とメーカーの組合せ表で、成立する電圧・短絡電流・形式・設定条件を確認します。選択遮断とカスケード遮断は資料を分けて照合してください。
単線結線図と選定表に残す情報
図面・記録 | 残す内容 |
|---|---|
単線結線図・盤図 | 回路名、電圧、極数、AF・定格電流、遮断容量、付属装置 |
選定計算書 | 負荷電流、電線補正条件、推定短絡電流、計算条件 |
保護協調資料 | 上下位の形式・設定、曲線、組合せ表、成立範囲 |
更新時の確認 | 電源・変圧器・ケーブル変更による再計算、盤の取付寸法と端子 |
既設盤の更新では、同じA数の後継品でも遮断容量や外形、端子、付属装置が一致するとは限りません。選定根拠を残すことで、次の増設時にも判断を引き継げます。
資料確認日:2026年10月30日。数値例は架空の条件です。実際には現行の電気設備技術基準・解釈、採用機器の最新仕様と設計条件を照合します。