
加湿・除湿設計の基本|加湿量の計算例と方式の選び方
気化式・蒸気式・水噴霧式の違いを比較し、乾き空気基準と単位をそろえた加湿量計算を解説。全外気と還気混合の例から入口条件の違いを示し、冷却除湿・再熱・デシカントの選び方、結露・衛生・送風連動など、湿度設計の確認事項を整理します。
加湿・除湿設計では、目標の相対湿度だけでなく、空気に加える・取り除く水分量を求め、温度条件と機器の能力を照合します。同じ定格加湿量の機器でも、入口の温湿度や風量、運転の連動方法が違えば、必要な湿度を保てるとは限りません。
本記事では、建築空調を中心に、気化式・蒸気式・水噴霧式の比較、加湿量の計算例、除湿と再熱、衛生・結露・制御の確認を整理します。
相対湿度と絶対湿度を使い分ける
相対湿度[%RH]は、その温度で空気が含める水蒸気に対する状態を表す指標です。含まれる水分量が変わらなくても、空気を加熱すると相対湿度は下がります。このため、冬の暖房では温度が保てても乾燥が問題になることがあります。
加湿量の計算には、空気中の水分量を表す絶対湿度を使います。空調の空気線図では、乾き空気1kg当たりの水分量としてkg/kg(DA)やg/kg(DA)で表します。DAは乾き空気を意味し、体積当たりの水分量g/m³とは区別します。参考:ウエットマスター「空気調和における加湿と加湿器」
目標温湿度は、人の快適性、製品・展示物の保全、作業、設備、外皮の結露条件等から決めます。相対湿度の一定範囲を、すべての用途に共通する設計目標として扱わないようにします。状態点の読み方は空気線図の読み方で確認できます。
気化式・蒸気式・水噴霧式の選び方
加湿方式は、水分を空気へ加える仕組みで整理します。ウエットマスターは、気化・蒸気・水噴霧の3方式に分類しています。水が蒸発するときに熱を受け取るという共通の現象と、製品の方式名を混同しないことがポイントです。出典:ウエットマスター「加湿方式と加湿器の種類」
方式 | 水分を加える方法 | 温度・エネルギーの確認 | 機器選定の注意 |
|---|---|---|---|
気化式 | 水を含ませた加湿材等に空気を通す | 蒸発により空気から熱を受け取り、温度が下がる | 入口温湿度、風量、飽和効率、給水、加湿材の保守 |
蒸気式 | 発生・供給した蒸気を空気へ加える | 蒸気発生の熱源、熱の持込み、給水・ドレンを含める | 蒸気の拡散・吸収距離、制御範囲、水質、スケール・保守 |
水噴霧式 | 微細な水滴を空気へ噴霧する | 蒸発時の冷却と、ポンプ等の動力を確認 | 入口条件、蒸発距離、未蒸発水、給水処理、保守 |
気化式の消費電力だけを見てシステム全体の省エネを判断せず、気化に伴う温度低下をどの熱源で補うかも考慮します。蒸気式も、すべての条件で室温を全く変えないわけではありません。温湿度精度、熱源、設置場所、運転時間、保守体制を同じ条件で比較します。
加湿量の計算式とkg/hの計算例
加湿器が処理する乾き空気の質量流量をG[kg(DA)/h]、入口と出口の絶対湿度差をΔx[kg/kg(DA)]とすると、必要加湿量W[kg/h]はW=G×Δxです。
体積流量[m³/h]から計算する場合は、その状態の空気の比容積等を使って乾き空気の質量流量へ換算します。密度を一定値で近似した場合は、その前提を記録します。相対湿度の差[%]を、そのままこの式へ入れることはできません。
乾き空気流量1,200kg/hの例
条件 | 例題の仮定 |
|---|---|
乾き空気質量流量G | 1,200kg(DA)/h |
入口絶対湿度 | 0.004kg/kg(DA)=4g/kg(DA) |
出口絶対湿度 | 0.008kg/kg(DA)=8g/kg(DA) |
必要加湿量 | 1,200×(0.008−0.004)=4.8kg/h |
g/kg(DA)で計算する場合は、1,200×(8−4)÷1,000=4.8kg/hです。kgとgの換算を忘れると1,000倍の誤りになるため、計算表に単位を付けます。この例は計算方法を示す仮定で、推奨する室内湿度や製品能力を表していません。
入口条件は全外気・還気混合・熱交換後で変わる
計算に使う入口は、屋外の状態とは限りません。実際に加湿器へ入る空気が、外気そのものか、還気と混合した空気か、全熱交換器を通った空気かを系統図で確認します。
構成の概念 | 加湿量計算で確認する入口 |
|---|---|
全外気 → 加熱 → 加湿 → 給気 | 加熱後・加湿前の状態。水分を加えない加熱のみでは絶対湿度は変わらない |
外気+還気 → 混合 → 加熱 → 加湿 → 給気 | 外気比率と還気状態を反映した混合空気 |
外気 → 全熱交換 → 加熱・加湿 → 給気 | 熱・水分回収後の状態と、交換器の実際の風量・性能条件 |
矢印は構成例で、実際の加熱・混合・加湿位置はシステムによって異なります。計算対象の加湿器入口と出口を、図面上に明記します。
混合空気に外気の湿度差を掛けない
仮に、乾き空気流量が外気300kg/h、還気900kg/hで、絶対湿度がそれぞれ0.004と0.008kg/kg(DA)なら、混合後は(300×0.004+900×0.008)÷1,200=0.007kg/kg(DA)です。
この混合空気を0.008kg/kg(DA)まで加湿する量は、1,200×(0.008−0.007)=1.2kg/hです。混合後の全風量に、未処理外気からの差0.004を掛けると4.8kg/hとなり、この仮定では過大になります。
この例は混合と加湿の関係だけを示しています。室全体の加湿負荷や供給空気の目標を決める段階では、人体・工程からの発湿、漏気、換気、還気・排気も整理します。全熱交換器の残負荷は外気処理と全熱交換器の選定も参照してください。
必要加湿量と定格能力が同じでも、選定は完了しない
加湿器の能力は、入口温湿度、風量、機器の構成等によって変わります。特に気化式では、入口条件に対してどこまで加湿できるかを示す飽和効率も確認します。暖房運転中と、室内負荷が小さく送風運転になったときでは条件が異なります。
ウエットマスターの製品資料も、同じ必要加湿量でも入口温度が下がると、必要な飽和効率が変わることを説明しています。定格kg/hだけで選ばず、実際の入口条件で性能を照合します。参考:ウエットマスター「製品一覧」加湿器選定の説明
湿度が上がらないときの確認 | 見る条件 |
|---|---|
入口の温度・湿度が想定と違う | 混合条件、加熱コイルの運転、熱交換器、外気量 |
加湿が起動していない | 暖房連動・送風連動、スケジュール、湿度設定、停止条件 |
能力が出ていない | 風量、給水、水質、加湿材・ノズル等の状態、機種の性能条件 |
センサーと室内状態が合わない | 設置位置、校正、吹出しの影響、代表する区画 |
冷却除湿・再熱・デシカントを使い分ける
冷却除湿は、冷却面で空気中の水分を凝縮させて取り除きます。除湿に必要な冷却を行うと供給空気の温度が低くなりすぎる場合があるため、供給温度を整える再熱を検討します。再熱は「低湿度の特殊室だけ」の処理とは限りません。
三菱重工の調湿外気処理機には、冷却除湿と再熱を組み合わせる構成が示されています。採用時は、目標の水分量と給気温度を両方満たせるかを確認します。参考:三菱重工サーマルシステムズ「ダイレクトX Comfort」
除湿方式 | 仕組み | 選定で確認する条件 |
|---|---|---|
冷却除湿 | 冷却により水分を凝縮・排出 | 必要露点、冷却コイル・熱源、凝縮水、供給温度と再熱 |
デシカント除湿 | 吸着材等で水分を取り除く | 必要露点、処理風量、再生用熱源・空気、処理後の温度調整 |
デシカントは、吸着した水分を放出して材料を再生する工程まで含めて計画します。西部技研の説明でも、ロータの吸着と加熱空気による再生が区別されています。除湿機単体の能力だけでなく、再生・冷却・排気のエネルギーと設置条件を比較します。参考:西部技研「デシカント除湿機」
衛生・結露・制御を含めた確認事項
水を扱う部分は、機種に合う給水水質、滞留水の扱い、排水、清掃・交換スペース、保守周期を確認します。蒸気式だから配管やドレンまで保守不要というわけではありません。方式ごとの取扱説明書に基づいて管理条件を決めます。
加湿した空気が十分に拡散・蒸発する前に冷たい面へ接触すると、濡れや結露の原因になります。加湿器の位置、必要な距離、ダクト内の状態、保温に加え、窓や外壁の表面温度も確認します。詳しくは結露を防ぐ空調設計を参照してください。
制御では、湿度センサーが代表する区画、風量低下・送風停止時の加湿停止、過加湿防止、警報、送風運転中の加湿要求を整理します。温度制御と湿度制御が互いに打ち消し合わないよう、冷却・加熱・加湿の順序と運転条件を共有します。
設計図書には、目標温湿度、空気量と入口・出口状態、必要水分量、採用方式、性能の確認条件、給排水・熱源、結露対策、制御と保守条件を残します。これらを一緒に示すことで、計算結果を実際の機器選定と運用につなげられます。参考資料の確認日:2026年10月9日。