防火区画を貫通するダクトと閉鎖羽根を示した防火ダンパーのイラスト
設備設計ナレッジ空調設備

防火ダンパーとは|FD・SFD・HFDの違いと設置基準・温度ヒューズ

防火ダンパーの役割とFD・SFD・HFDの違いを解説。72℃・120℃・280℃の温度ヒューズの考え方、防火区画貫通部の納まり、感知器との連動、点検口まで、系統別の設計例と確認表で整理します。

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猪狩理

設備設計士

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更新日

防火ダンパーは、ダクトが防火区画を貫通する部分などで、火炎や煙が別の区画へ広がることを防ぐ設備です。火災時に閉鎖する仕組みだけでなく、区画との取り合い、支持、作動後の復旧、保守点検までそろって機能します。

図面のFD・SFD・HFDは、設置する系統や作動条件を読み分ける手掛かりです。記号だけを転記せず、何を検知して閉じるか、排煙を妨げないかまで確認しましょう。

FD・SFD・HFDの違い

略号・一般的な呼び方

主な作動の考え方

図面で確かめる項目

FD:防火ダンパー

温度ヒューズ等による閉鎖

系統、作動温度、設置方向、復帰方法

SFD:防煙・防火ダンパー

煙感知器等との連動による閉鎖と、温度ヒューズによる閉鎖

連動元、制御電源、信号、作動確認・復帰

HFD:排煙用防火ダンパー

排煙系統で高い公称作動温度のヒューズを使用

排煙の継続性、設置の可否、温度、製品表示

名称の整理にはフカガワのダンパー製品分類も参考になります。図面略号は設計者やメーカーで表記が異なる場合があるため、凡例と機器仕様を優先します。SD、MD、VDなども、同じ「ダンパー」という理由だけで置き換えられません。

空調・換気では火災時の区画閉鎖、排煙では必要な経路の確保を同時に考えます。一般空調用FDを排煙ダクトへそのまま使うと、排煙中に閉鎖して必要な排煙量が得られなくなるおそれがあります。

設置基準は防火区画とダクトの用途から確認する

まず建築図から防火区画の位置と種類を確認し、その上に空調・換気・排煙ダクトの経路を重ねます。根拠は建築基準法施行令第112条と関係告示です。防火ダンパーを省略できる条件もありますが、ダクトの材質や断面積など一つの条件だけで適用を決めないようにします。

  1. ダクトが貫通する壁・床は、どの法令上の区画かを特定する。
  2. ダクトの用途と、火災時に閉鎖させる必要があるかを確認する。
  3. 必要な閉鎖条件・遮煙性能等に適合する製品と設置方法を選ぶ。
  4. 区画からの距離、区画までの風道、周囲の充填、支持を詳細図にする。
  5. 操作・点検の空間と、建築・電気工事との分担を確定する。

風量調整用のVDが近くにあっても、防火ダンパーの代わりにはなりません。また、外壁開口部の延焼対策や厨房フード直上の火炎伝送防止装置と、防火区画を貫通する風道の対策は、求められる条件をそれぞれ確認します。

温度ヒューズの72℃・120℃・280℃は何を表すか

温度ヒューズは周囲の温度上昇に応じて閉鎖機構を作動させる部品です。表の数値は公称作動温度で、室温の設定値や「その温度までは安全」という保証を表すものではありません。

一般的な区分

公称作動温度の例

選定時の注意

一般空調・換気系統

72℃

通常時の送風温度、設置環境を照合する

厨房排気系統

120℃

高温・油脂付着、清掃方法、適用する条例等も確認する

排煙系統のHFD

280℃

排煙用の製品であることと設置の可否を確認する

これらの例と部品の扱いは日本防排煙工業会Q&A(1-14・1-15等)を参照しています。ヒューズは温度が同じでもメーカー間で自由に互換できる部品ではありません。使用温度を上げたい場合やFD・HFDの取り違えが判明した場合は、本体・閉鎖装置を含めた適合をメーカーに確認します。

作動したヒューズを現場で補修して再使用したり、別温度の部品に自己判断で替えたりする計画は避けます。設計図の機器表には、ダンパーの形式と作動温度を別々の欄で記載しておくと取り違えを減らせます。

HFDと排煙口を混同しない

排煙口は必要な区画から煙を取り入れ、排煙経路へ導くために開放します。一方、HFDは高温時の防火機能を持つダンパーです。「排煙に関係する設備」という共通点があっても、役割と作動条件は同じではありません。

日本防排煙工業会は、排煙系統用の280℃ヒューズ付きダンパーについて、一般の自主適合マークと区別する表示を案内しています。HFDと書けばすべての排煙ダクトに設置してよいわけではなく、消火活動拠点の排煙・給気などは自動閉鎖装置を設けたダンパーを設けない規定との照合が必要です。

排煙経路は、起動から排煙口開放、ファン運転までを連動表で追い、ダンパーの開閉によって必要な経路が失われないことを確認します。排煙設備の要否は排煙設備の設置基準と合わせて整理してください。

設計例|区画壁を横断する給気ダクト

事務所Aと事務所Bを区切る防火区画壁を、給気ダクトが一か所貫通する架空の例です。感知器連動で閉鎖させる条件が必要で、SFDを採用すると仮定します。以下は記載項目の例で、仕様を一律に指定するものではありません。

空調機 → 給気ダクト →[区画壁・SFD]→ 事務所B
対象感知器 → 連動制御器 → SFD閉鎖/状態確認

図面・資料

記載例

調整相手

平面図

SFD-01、風量、寸法、区画線、点検口位置

建築・空調

断面詳細

壁面からの位置、区画までの風道、支持、周囲の処理

建築・施工

機器表

閉鎖条件、作動温度、電圧、復帰方法、使用圧力

メーカー・電気

連動表

対象信号、閉鎖する番号、ファンの扱い、確認・復旧手順

防災・空調制御

天井の点検口を一つ描いても、その真上にケーブルラックや配管があれば操作できません。点検口から閉鎖装置へ手が届くか、ダクト内部を確認できるか、復帰操作に必要な向きと空間があるかを断面で検討します。

圧力損失と保守を忘れない

同じ接続寸法でも、ダンパーの構造で有効な流路と圧力損失は変わります。全開時のメーカー資料を使い、設計風量の運転点で確認します。風量を確保するために防火ダンパーを半開固定するなど、作動機構を妨げる調整は行いません。必要な風量調整は、その役割を持つ機器で計画します。

保守の観点では、油脂・粉じん・腐食の状態を確認できることが重要です。劣化の見方は工業会「装置のメンテナンス」も参照できます。検査・整備は有資格者等が機器の手順に沿って行い、設計段階では到達性と交換スペースを確保します。

入稿・施工前の確認表

  • 区画線と全ダクト経路を重ね、設置根拠・省略根拠を残したか。
  • FD・SFD・HFDの用途、作動条件、ヒューズ温度を一致させたか。
  • 主要構造部への固定、貫通処理、区画までの風道を詳細化したか。
  • 電源・信号・状態確認・復帰を、連動表と各工事区分に反映したか。
  • 点検口から作業でき、将来もラックや配管で塞がれないか。
  • 排煙経路では設置禁止条件と排煙継続性を確認したか。

資料確認日:2026年10月30日。工業会資料には旧条項表現を含むため、実際の設計では現行法令・告示と採用製品の最新施工要領を照合します。