電気設備設計とは?仕事内容・設計の流れと成果図書の全体像
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電気設備設計とは?仕事内容・設計の流れと成果図書の全体像

建築の電気設備設計が担当する受変電・幹線・照明・コンセント・弱電の範囲を整理。基本設計から実施設計への流れ、単線結線図・平面図・盤表・計算書の役割、建築・機械設備との調整、設計変更時に確認する図書を具体例で解説します。

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猪狩理

設備設計士

公開日
更新日

電気設備設計とは、建物で使う電気の容量・供給経路・機器配置・制御方法を検討し、図面や仕様書、計算書にまとめる仕事です。照明やコンセントだけでなく、空調機やポンプの電源、通信設備、停電時に必要な電源なども関係します。

この記事では、建築の電気設備設計を初めて学ぶ方や、設計業務を依頼する方に向けて、「何を決める仕事か」「どの順序で進めるか」「何を成果図書として残すか」を整理します。電子機器の回路設計や工場設備の制御設計とは、対象範囲が異なります。

電気設備設計の対象範囲と仕事内容

設計では、建物の用途、使用する機器、運用時間、将来の増設、保守のしやすさを条件として整理します。同じ床面積でも、事務所・店舗・実験室では必要な電源や通信環境が違うため、面積だけでは設計条件を決められません。

設備分野

主に検討すること

図面・資料の例

受変電・幹線

受電方式、必要容量、電源系統、盤配置、配線経路

負荷表、単線結線図、幹線系統図

照明・コンセント

使い方に応じた器具配置、回路分け、操作・制御

電灯・コンセント平面図、器具表、盤表

動力

空調機・ポンプなどへの電源供給と制御の分担

動力平面図、負荷表、制御に関する資料

通信・弱電

LAN、電話、放送、監視等の系統と配線・設置場所

弱電系統図、平面図、機器仕様

防災・非常電源

対象設備、停電時に維持する機能、電源切替

防災設備図、非常電源系統図、容量検討資料

接地・雷保護

設備に応じた接地方式、接続、保護機器の配置

接地系統図、接地平面図、詳細図

実際の担当範囲は契約や工事区分で変わります。たとえば、空調機の制御盤を機械設備側が用意する場合でも、電気設備側との電源・配線・信号の接続条件を確認する必要があります。

設計は「条件整理→基本設計→実施設計」で具体化する

1.条件整理:決まっていることと未決事項を分ける

建物用途、室の使い方、機器リスト、電源条件、運用時間、既存設備の状況を集めます。機器リストには、台数だけでなく電圧・相数・入力容量・運転条件を記録します。未選定機器は暫定条件と回答期限を明記し、確定値と混在させないことが大切です。

2.基本設計:方式と大きな配置を決める

電源の受け方、概略容量、主要な電気室や盤の位置、幹線ルート、非常時の運用方針を検討します。電気室やEPS(電気配線などを通す縦方向のスペース)は、建築計画の段階で必要な面積と点検・更新経路を調整します。概算工事費との比較も、この段階で方向性をそろえるために役立ちます。

3.実施設計:計算結果と図面を一致させる

機器条件や回路構成を具体化し、電線・ケーブル、遮断器、盤、器具の仕様を整理します。平面図を描くだけでなく、負荷表、系統図、盤表、各種計算書を照合し、同じ設備が同じ番号・容量で扱われているか確認します。

官庁施設向けの設計手法は、国土交通省の建築設備設計基準(令和6年版)で確認できます。たとえば配線の太さは負荷電流と電圧降下を踏まえて検討する構成です。個別案件では、適用する基準と設計条件を確認して使用します。

電気設備設計の成果図書一覧と役割

成果図書は、設計の判断を発注者・施工者・関係設計者へ伝えるための資料です。以下は一般的な整理例であり、すべての案件で同じ図書一式が必要という意味ではありません。納品物、作成段階、データ形式、積算や申請対応の有無は、着手時に合意しておきます。

図書

読み取る内容

照合する相手

設計説明書・設計条件表

用途、設計方針、採用方式、前提条件

発注者の要求、打合せ記録

負荷表・容量計算書

機器ごとの電源条件と必要容量の根拠

機器表、盤表、受変電設備

単線結線図・幹線系統図

電源から盤・負荷までのつながり

幹線平面図、盤表、配線計算

各設備の平面図

器具・盤の配置、配線ルート、回路番号

建築平面図、天井図、系統図

盤表・器具表・機器表

回路構成、機器の仕様、型式区分

平面図、負荷表、仕様書

照度・電圧降下等の計算書

配置や選定を裏付ける計算条件と結果

器具表、経路長、配線仕様

特記仕様書・詳細図

図面だけでは伝わらない条件や納まり

適用基準、各図面、工事区分

設計図書の表示方法の参考として、国土交通省は建築設備工事設計図書作成基準(令和6年改定)を公開しています。官庁施設向けの基準で、図面と特記仕様書の書式・表示、図示記号などを整理したものです。

CADやBIMは、これらの情報を表現・共有するための手段です。BIMモデルを納品する場合は、形状だけでなく、入力する属性情報、作成する範囲、図面との整合をどこまで確認するかも決めます。

例:会議室の機器追加は、どの図書に影響する?

ここでは説明用に、会議室へ大型モニターとオンライン会議用機器を追加する場面を考えます。「コンセントの記号を増やす」だけでは、設計変更は完了しません。

  1. 機器条件を確認する:入力容量、必要な電源、接地、常時給電の要否を機器資料で確認する。
  2. 回路を確認する:既存回路に接続できるか、専用回路が必要かを検討し、負荷表と盤表を更新する。
  3. 上流への影響を確認する:盤・幹線・電源容量に影響する場合は、関連する計算と系統図を見直す。
  4. 使える位置へ配置する:家具、壁面仕上げ、LAN端子、配線経路を合わせて平面図へ反映する。
  5. 変更を共有する:更新した図面番号と変更理由を記録し、関係者へ同じ版の資料を渡す。

このように、一つの用途変更を「機器→回路→盤→幹線→電源」とたどれると、修正すべき図書の抜けを減らせます。

建築・機械設備との調整で確認すること

調整する相手

確認する情報

起こりやすい不整合

建築設計

電気室・EPS、天井高さ、点検口、家具配置

盤の扉が開かない、器具と天井割付が合わない

機械設備設計

電圧・相数・容量、起動方式、制御と配線の分担

機器変更が電源容量や盤表に反映されない

構造設計

機器荷重、開口・貫通、支持条件

予定した配線ルートや機器配置が成立しない

発注者・運用担当者

運用時間、停止可能時間、増設予定、管理方法

必要な場所で給電・操作・保守ができない

打合せでは、検討事項だけでなく「誰が」「いつまでに」「どの資料を確定するか」を残します。特に機械設備の機器表が変わったときは、電気側の負荷表と盤表をセットで確認すると変更を追いやすくなります。

設計・作図・施工管理・工事監理の違い

設計は、要求を満たす方式や仕様を検討し、図書に表す仕事です。作図は、その結果を図面として整理する作業です。CADを操作できることに加え、図面の条件や計算根拠を理解する力が設計では求められます。

施工管理では工事の工程・品質・安全などを管理します。工事監理では、工事が設計図書に適合しているかを確認します。設計後の質疑対応、施工図の確認、工事監理まで担当するかは、業務範囲に応じて整理します。設計図、施工図、完成図もそれぞれ作成目的と段階が異なるため、混同しないようにします。

初心者が学ぶ順序と、次に読む記事

  1. 電源から機器までのつながりを、単線結線図の読み方でつかむ。
  2. 機器容量を集計する考え方を、受変電設備の容量計算で学ぶ。
  3. 配線の選定根拠を、幹線設計と電圧降下計算で確認する。
  4. 末端の回路構成を、分電盤の設計と回路構成で整理する。
  5. 用途に応じた設計へ進み、照明設計や弱電・情報通信設備の設計を学ぶ。

計算を試す際は、設備設計の計算ツールも利用できます。入力条件と計算結果を記録し、図面に記載した値へ結びつける練習に役立ててください。

よくある質問

電気設備設計は、照明とコンセントの配置だけですか?

それに加え、受電・幹線・動力・通信・防災などを含む電気設備全体の条件を検討します。担当範囲は案件によって違うため、設備ごとの工事区分も確認します。

成果図書は毎回同じですか?

新築か改修か、設計段階、建物の用途、契約範囲によって異なります。図面の名称だけでなく、計算書・積算資料・データ形式も含めた成果品一覧で確認するのが実務的です。

設計を依頼するときは何を用意しますか?

建築図、室の用途、機器リスト、希望する運用、予算・工程、既存図面の有無を整理すると相談が進めやすくなります。未確定の条件も、そのまま未確定として共有します。

設備設計の支援内容は、パラダイムのサービス案内をご覧ください。

参考資料

国土交通省の官庁営繕の技術基準に掲載された建築設備設計基準・設計図書作成基準・公共建築設計業務委託共通仕様書(令和6年改定)を参照しています。これらは官庁施設等を対象とする資料であり、個々の民間案件への適用は契約条件等によって異なります。資料確認:2026年9月。

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