
漏電遮断器(ELCB)の選び方|感度電流・設置義務と配線用遮断器との違い
漏電遮断器とMCCBの違い、OC付き・地絡保護専用の区別、定格感度電流と動作時間を解説。設置義務の確認手順、常時漏れ電流、インバータ対応、主幹と分岐の保護協調を設計例で整理します。
猪
猪狩理
設備設計士
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漏電遮断器(ELCB・ELB)は、電路から大地等へ流れる漏れ電流を検出し、回路を遮断する機器です。過負荷・短絡を保護する配線用遮断器(MCCB)とは、検出する異常が異なります。
設備設計では、定格電流と遮断容量に加え、漏電に対する感度電流、動作時間、負荷の波形、接地、上下位の協調を確認します。「感度を小さくすれば常に適切」「落ちるので感度を大きくする」といった一項目だけの判断を避けることが大切です。
MCCBとの違いと、OC付き・OCなし
一般的な電流動作形の漏電遮断器は、零相変流器(ZCT)等で往路・復路の電流の不平衡を捉えます。通常の負荷電流より小さい地絡電流でも検出できる点が、過電流保護との違いです。仕組みは日本電気技術者協会の技術講座を参照できます。
機器・機能 | 過負荷・短絡 | 漏電・地絡 | 選定上の注意 |
|---|---|---|---|
一般のMCCB | 保護する | 専用の検出機能はない | 小さい地絡電流の保護を兼ねるとは考えない |
OC付き漏電遮断器 | 保護する | 保護する | 電線保護と漏電保護を両方確認 |
OCなし・地絡保護専用 | 保護しない | 保護する | 過電流保護器との適切な組合せが必要 |
漏電警報の機能 | 製品構成による | 警報のみの場合がある | 検出時に遮断するのか、警報するのかを区別 |
OCは過電流(Over Current)を表します。製品の外形や「漏電」という名称だけでは機能を判断できません。テンパール工業のFAQでも、OC付きと地絡保護専用品を区別しています。機器表にはOCの有無を記載します。
設置義務は場所・機器・電路から調べる
法令上の入口は電気設備に関する技術基準を定める省令第15条の地絡に対する保護対策です。具体的な施設条件は、経済産業省が公開する電気設備の技術基準の解釈第36条などを確認します。
代表的な原則として、使用電圧60Vを超える低圧の金属製外箱の機械器具に接続する電路が検討対象です。ただし、施設場所や機器の構造、防護措置等による例外、ほかの条項で個別に定める電路もあります。Panasonicの用語解説も、この規定を参照しています。
確認する情報 | 判断に必要な具体例 |
|---|---|
電路 | 使用電圧・対地電圧、供給方式、用途、適用する個別規定 |
機械器具 | 金属外箱、絶縁構造、内蔵保護、メーカーの施工指定 |
場所 | 乾燥・湿気・水気、屋内外、人の接触、使用方法 |
接地・防護 | 接地方式と抵抗、接触防護、遮断までの条件 |
「接地したので漏電遮断器は不要」「漏電遮断器があるので接地は不要」と一律に判断しないようにします。接地と自動遮断は一緒に成立させる保護計画です。接地の基礎は接地設計の基本も参照してください。
定格電流Aと定格感度電流mAは別の値
定格電流は負荷を流し電線を保護するためのAの値、定格感度電流IΔnは漏電検出に関するmAの値です。たとえば「40A・30mA」の二つの数値は、それぞれ別の機能を示します。mAを大きくしても通常負荷に流せるAが増えるわけではありません。
三菱電機「動作する漏洩電流の値」では、代表的な漏電引外し特性について、実際の感度電流は定格感度電流の50%を超え100%以下と説明しています。30mA品なら、15mAを超え30mA以下の範囲で動作する場合があります。30mA未満なら必ず動かない、という意味ではありません。
感電防止を目的に高感度高速形を用いる条件では、感度と時間の双方を確認します。Panasonicの感度電流選定FAQは、30mA以下・0.1秒以内などの確認条件を示しています。一方で、すべての設備の主幹に同じ30mA品を採用すればよい、という意味ではありません。
設計例|分岐の漏れ電流が主幹へ集まる場合
同一主幹の下に四つの分岐があり、それぞれの常時漏れ電流を設計用に4mAと仮定します。波形・位相の相殺を見込まず保守的に加算すると、主幹側の検討値は16mAです。実際の合成値は回路条件によるため、測定・メーカー資料でも確認します。
設置点 | 架空の漏れ電流検討値 | 30mA品を比較する際の注意 |
|---|---|---|
各分岐 | 4mA | 定常値だけでなく、起動・切替時も確認 |
共通主幹 | 4mA×4=16mA | 15mAを超えるため、30mA品の不動作を当然とは考えられない |
増設後 | 負荷・配線の追加分を再集計 | 元の主幹設定のままでよいか再検討 |
この例から直ちに主幹を100mA等へ変更するのではなく、必要な感電保護条件を保った上で、系統分割、負荷ごとの保護、波形への対応、上下位の時間協調を検討します。必要な保護を弱める調整ではなく、不要動作の原因を特定することが先です。
インバータ・ノイズフィルタを含む回路
インバータ、ケーブル、モーター、ノイズフィルタ等は漏れ電流の検討対象になります。高周波成分への対応は製品ごとに異なるため、汎用品のmA値だけを見て選ばないようにします。滑らかな直流成分等を含む可能性がある場合も、検出対象の波形に対応する保護器を確認します。
インバータ一次側の選定には富士電機の専用FAQなどを用い、実際に採用するインバータ・フィルタ・電線長・漏電遮断器の組合せで照合します。他製品の計算式や推奨感度を、そのまま転用しないことが重要です。
主幹と分岐は感度と動作時間の両方で協調させる
主幹100mA、分岐30mAという差があっても、大きな地絡電流では両方が検出します。健全な回路を残すには、分岐が遮断を完了する時間と、上位が動作する時間の関係まで確認します。過電流に対する保護協調と、漏電に対する保護協調も分けて検討します。
単線結線図には、電圧・極数・定格電流・遮断容量に加え、感度電流、動作時間区分、OCの有無、インバータ等への適用を記載します。調整式の機種は実際の設定値を竣工図に残し、納入時の初期設定のまま扱わないようにします。
試験・引渡しのチェックリスト
- 設置根拠と省略する場合の根拠を、電路ごとに記録したか。
- OCの有無、電線保護、短絡遮断容量を確認したか。
- 必要な感度・動作時間と接地条件が整合しているか。
- 常時・過渡時の漏れ電流と、負荷の波形を確認したか。
- 主幹と分岐の協調、停止範囲、復旧手順を定めたか。
- テストボタンの確認と、必要な感度・動作時間試験を区別して計画したか。
試験は有資格者等がメーカー手順に沿って行い、結果と設定を記録します。テストボタンが動作したことだけで、接地を含む設備全体の安全性を確認したことにはなりません。
資料確認日:2026年10月30日。数値例は架空の設計条件です。施設条件と採用機種の最新資料を照合して最終仕様を決定します。