チラー(冷凍機)とは?空冷・水冷の違いと選定・COP・設置計画を設計目線で解説
設備設計ナレッジ空調設備

チラーとは?空冷・水冷の違い、COPと容量選定の考え方

チラーの役割を、冷水と冷却水の系統図で解説。空冷式・水冷式の違い、圧縮機方式、COPと部分負荷効率、補機を含めた比較の計算例を示し、必要能力・台数・流量から水質・凍結・搬入更新まで、選定時の確認条件を整理します。

長

長谷川一夫

機械設備設計部

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チラーは、水やブラインなどの液体を冷却し、空調や生産設備へ送る熱源機器です。建築空調では冷水をAHU(空気調和機)やFCU(ファンコイルユニット)へ供給します。加熱に対応したヒートポンプ式なら温水もつくれますが、冷房専用機もあるため製品の機能を確認します。

空冷式と水冷式の違いは、取り出した熱をどう放出するかです。能力やCOPだけでなく、ポンプ・冷却塔、水管理、運転条件、保守更新を含めて比較します。本記事では、建築空調向けの一般的な構成を中心に選定の考え方を整理します。

チラーの役割|冷水と冷却水は別の回路

チラーで冷やした水は空調機側へ送られ、室内等の熱を受け取って戻ります。この負荷側の水を冷水と呼びます。一方、水冷式で熱を放出する側に使う水が冷却水です。名前が似ていますが、目的・水温・接続機器が異なります。

回路・熱の移動

一般的な構成例

役割

空冷・水冷に共通する負荷側

チラーの冷水出口 → 冷水ポンプ → AHU・FCU → チラーの冷水入口

空調負荷から熱を受け取り、チラーへ運ぶ

空冷式の放熱側

冷媒の熱 → 空気熱交換器・ファン → 外気

周囲の空気へ熱を放出する

水冷式の放熱側

凝縮器で温まった冷却水 → 冷却塔 → 冷却水ポンプ → 凝縮器

冷却水を介し、冷却塔から外気へ放熱する

図は関係を示す概念図で、ポンプの位置や台数、弁・水槽等を含む施工図ではありません。冷却塔を使わない放熱構成もありますが、水冷式を検討する際は、まず放熱先と必要な機器を明らかにします。冷却塔の性能条件は冷却塔の選定と水質管理で詳しく説明しています。

冷水の送り7℃・戻り12℃などは設計条件の例です。用途、コイル、除湿の要求、チラーの運転範囲によって設定が変わるため、一律の標準値として固定しません。

空冷式・水冷式の比較

比較項目

空冷式

冷却塔を使う水冷式

放熱設備

空気熱交換器・ファン

冷却塔・冷却水ポンプ・配管等

影響する外気条件

外気温、放熱空気の再吸込み等

冷却塔の設計湿球温度や冷却水温等

水の管理

冷温水側の水質、凍結、漏水を確認

冷温水側に加えて冷却水・冷却塔側を管理

設置

吸込・吹出空間、騒音、屋外の荷重・保守動線

熱源機械室に加え、冷却塔の空間・荷重・配管経路

効率比較

チラーに含まれるファン・ポンプの範囲を確認

チラーに含まれない冷却塔・ポンプ等の電力を加える

保守・更新

屋外環境の影響、モジュール単位の搬出入等

水系統の保守、機械室への搬入、冷却塔の更新等

空冷式は冷却塔側の水回路を省けますが、水処理・水質管理がすべて不要になるわけではありません。三菱電機の空冷チラー仕様書にも、冷温水系の循環水・補給水の水質条件が示されています。水質の項目や管理方法は、採用機種と回路条件に合わせて確認します。参考:三菱電機「空冷式冷房専用チラー仕様書」

圧縮機方式と吸収式の位置づけ

空冷・水冷は放熱方式の分類です。スクロール・スクリュー・ターボは圧縮式冷凍機の圧縮機方式で、分類の軸が異なります。吸収式は熱を利用する冷凍サイクルであり、圧縮機の種類として並べないようにします。

方式

比較する主な条件

スクロール

必要能力、複数圧縮機やモジュールによる分割、低負荷運転

スクリュー

容量制御、冷水温度、負荷の変化、保守体制

ターボ(遠心)

必要能力と運転条件、低負荷の運転範囲、台数構成

吸収式

ガス・蒸気・温水等の熱源条件、補機電力、放熱・保守、エネルギー単価

容量帯や圧縮機名だけで機種を決めず、候補製品の性能表を物件の条件に合わせて比較します。吸収式と電動圧縮式を比べる場合は、投入エネルギーの種類が異なるため、COPの数字だけで運転費や一次エネルギーの優劣を判断しません。

COP・部分負荷・システム効率の見方

電動チラーの冷却COPは、冷却能力をその評価範囲に含まれる消費電力で割った値です。値には冷水温度、外気温または冷却水温、負荷率などの条件が付きます。条件や含まれる補機が異なる数値を、そのまま比較しないことが重要です。

同じ能力でも、評価範囲でCOPは変わる

以下は計算方法を示す仮定で、製品の実測値や推奨値ではありません。

評価する範囲

仮定条件

計算結果

チラー単体

冷却能力300kW、チラー入力60kW

300÷60=COP 5

補機まで含めた範囲

上記に、その範囲外だったポンプ・冷却塔等の入力15kWを加算

300÷(60+15)=COP 4

内蔵ポンプ等が既にチラーの消費電力に含まれているなら、同じ電力を再び足しません。また、分子の冷却能力をどの位置で評価するかもそろえます。評価範囲を系統図に囲っておくと比較条件を共有しやすくなります。

部分負荷指標を年間電気代へ読み替えない

実際の負荷は時間とともに変化するため、定格だけでなく部分負荷の性能や制御を確認します。IPLV等は定められた条件による指標であり、物件ごとの年間電気代そのものではありません。年間評価では、負荷の時間分布、気象、運転時間、補機、エネルギー単価等が必要です。

ダイキンはモジュールチラーについて、部分負荷性能とともに、IPLVに表れないポンプ動力の低減にも言及しています。単体の指標に加えて水搬送まで見る理由がここにあります。参考:ダイキン「HEXAGON GX」製品発表

容量・台数・流量を決める手順

1.同時刻の熱負荷と必要水温を整理する

各室のピークを無条件で足し合わせず、熱源が担当する範囲の同時刻負荷を確認します。外気処理、予冷、設備からの発熱、将来の増設条件も整理し、重複した余裕を重ねないようにします。基本となる考え方は熱負荷計算を参照してください。

2.最低負荷と停止時の影響を含めて台数を比較する

台数分割は低負荷対応や保守時の運転継続に役立つ場合がありますが、分割すれば常に効率が高くなるわけではありません。最低能力、同時運転台数、ポンプ制御、起動停止の条件、予備能力、設置面積を合わせて比較します。夜間に小さな負荷だけ残る建物では、その運転点も検討します。

3.温度差から流量を決め、許容条件を照合する

同じ熱量を運ぶ場合、水温差を大きく取れば必要流量を減らせます。ただし、チラーや末端コイルがその温度・流量で必要性能を満たすことが前提です。最小・最大流量、圧力損失、保有水量、変流量への対応条件をメーカー資料と照合します。

ポンプの流量・揚程と運転点はポンプの選定と揚程計算へ、配管ルートや保温は冷温水配管の設計へ進んでください。チラー・ポンプ・末端を別々に最適化せず、同じ水温・流量条件で確認します。

水質・凍結・設置と更新の確認

  • 水質:循環水・補給水、配管材料、水処理方法を採用機種の条件に合わせます。
  • 凍結:地域と屋外配管、停止・停電時の状態を確認し、機種に適合する対策を決めます。ブライン使用時は濃度による能力・流量・圧損への影響も照合します。
  • 放熱・騒音:空冷では再吸込みと障害物、水冷では冷却塔まで含めた配置・騒音を確認します。
  • 更新:荷重、点検空間、搬出入経路、揚重、仮設や停止可能時間を設計段階で残します。

フリークーリングは、外気条件と必要水温、利用時間、熱交換器等の構成が成立するときに検討する選択肢です。どの建物でも冬季に利用できるとはせず、補機電力も含めて効果を比較します。

選定条件書には、必要能力、水温・流量、最低負荷、台数と予備能力、電源、設計外気・冷却水条件、水管理、許容停止時間、搬入更新条件を残します。これにより、チラー単体の価格やCOPだけでは分からない運用上の違いを比較できます。参考資料の確認日:2026年10月9日。