
ケーブルラックとは|種類・支持間隔・幅の選定方法と設計の注意点
ケーブルラックの種類と材質、ラック幅の算定、水平・垂直の支持間隔を解説。ケーブル外径と条数を使った幅400mm候補の計算例から、許容荷重・耐震支持・許容電流・曲げ半径・保守と増設余裕まで、図面で照合する手順を整理します。
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猪狩理
設備設計士
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ケーブルラックは、複数のケーブルをまとめて敷設し、所定の経路で支持するための部材です。電気設備の幹線や通信配線などに使われ、親げた・子げた、直線部、曲がり・分岐部、支持金物等を組み合わせて構成します。
選定は「ケーブルが幅の中に入るか」だけでは終わりません。ケーブルの配置、許容電流、ラックと支持材の荷重、曲げ半径、点検・増設の作業空間をまとめて確認します。
形状・材質を設置場所に合わせる
区分 | 特徴 | 主な確認点 |
|---|---|---|
はしご形 | 親げたと子げたで支持し、ケーブルの配置を確認しやすい | 細いケーブルの支持、落下防止、結束と曲がり部 |
トレー形・底板付き | 底面で支持する構成。小径ケーブル等の取扱いを検討しやすい | 放熱、排水・清掃、重量、採用する敷設条件 |
鋼製 | 表面処理や形状を設置環境に合わせて選ぶ | 腐食環境、めっき・塗装、切断部、支持材との組合せ |
アルミ・ステンレス等 | 軽量化や耐食性等の要求に合わせて検討する | 支持スパンと荷重表、異種金属接触、価格・施工条件 |
屋内・屋外、湿気、塩分、薬品等によって適した仕様は変わります。メーカーの商品名だけで選ばず、材質・表面処理・支持方式・附属品の範囲を仕様書へ残します。カバーが必要な場所では、重量と放熱、屋外での風による飛散防止も含めます。
選定を始める前に作るケーブル一覧
ルートの区間ごとに、ケーブルの種類、電圧、心数、導体サイズ、条数、仕上り外径、単位長さ質量を集計します。途中で分岐すれば、その先の必要幅と荷重は変わります。最も多い区間だけでなく、曲がり・立上り・盤への引出しも確認します。
ケーブルの「100mm²」は導体の断面積です。ラック幅の計算にはケーブル全体の仕上り外径を使います。外径・質量は採用品の資料で確認し、同じ導体サイズだから同じ外径とは考えないでください。
幅の計算例:低圧電力ケーブルを1段に並べる
説明用に、仕上り外径30mmを3条、20mmを4条敷設する条件を仮定します。電力・制御の分離やセパレータの追加幅は、この例には含めません。
仮定したケーブル | 外径D | 条数n | 外径の合計 |
|---|---|---|---|
A系統 | 30mm | 3条 | 90mm |
B系統 | 20mm | 4条 | 80mm |
合計 | ― | 7条 | 170mm |
農林水産省の電気設備施工技術指針・第4章には、低圧電力ケーブル1段積の幅算定例として、次の式が示されています。
W ≧ 1.2 ×{Σ(D+10)+60}[mm]
Dは各ケーブルの仕上り外径、10mmは各条の結束幅、60mmは両端の余裕幅、1.2は余裕率です。この式の10mmを、あらゆるケーブルに共通する放熱上の必要離隔と解釈しないようにします。
本例は、W ≧ 1.2×{170+7×10+60}=360mmです。呼び幅400mmを候補にできるか、製品の有効内幅、セパレータ、端部や継手の納まりを確認します。呼び幅と実際に配置できる幅は、必ずしも同じではありません。
配置の概念図:左端余裕|A系統3条|B系統4条|右端余裕
この式は特定の設計資料の条件を使った算定例です。3段積の制御線、単心の俵積み、特殊ケーブル等へ同じ式を無条件に広げません。また、幅に1.2を掛ける計算は「選定幅の20%を必ず空ける」という計算とは異なります。将来の追加ケーブルを指定する場合は、その条数と仕様を別に積み上げます。
ラックの支持間隔と、ケーブルの固定間隔を分ける
国土交通省の公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版第2編2.10.1は、次の支持間隔を示しています。
対象 | 同仕様書の間隔 | 合わせて確認すること |
|---|---|---|
鋼製ラックの水平支持 | 2m以下 | 端部、曲がり等との接続部近傍の支持 |
その他の材質の水平支持 | 1.5m以下 | 製品の材質・荷重・支持条件 |
垂直支持 | 3m以下 | 配線室等で6m以下の範囲で各階支持とできる条件 |
これは官庁営繕工事の標準仕様です。民間案件では採用基準・特記仕様を確認し、数値以内でも荷重や製品条件を満たさなければ支持を増やす等の検討が必要です。
ラックを構造体に支持する間隔と、ケーブルを子げた等へ固定する間隔は別の確認です。同仕様書2.10.4.3のケーブル固定の条件やトレー形の扱いも読み、ラックの支持間隔だけを記して確認を終えないようにします。
荷重・たわみ・耐震支持を照合する
ケーブルの単位長さ質量に、ラック、カバー、セパレータ等の自重と計画する増設分を加えます。荷重表がラック自重を含むか、ケーブル積載分だけかを確認してください。等分布荷重と集中荷重も同じ条件ではありません。
例えば全体を16kg/mと仮定し、連続する等スパンの中間支持1か所が受け持つ長さを2mと置けば、受持ち質量の一次目安は32kg、重力による荷重は約314Nです。この値だけで吊りボルトやアンカーを決定せず、ラック本体、支持金物、接続部、構造体への定着まで照合します。端部や曲がり部では条件が変わります。
自重を支える支持と地震時の振止め・耐震支持も分けて検討します。必要な水平震度、吊り長さ、支持方向、スラブや梁の条件などによって構成が変わります。ネグロス電工の地震対策関連商品選定ガイドのように、適用条件と荷重表をセットで確認します。
幅に収まっても、許容電流と曲げ半径を確認する
ラック内のケーブルを密集・積重ねして置くと、放熱条件が変わります。採用する許容電流表の敷設条件と実際の並べ方を一致させ、必要な補正を行います。ラック幅が足りないから上に重ねる、という変更は電気的な選定にも影響します。
許容電流の前提はCV・CVTケーブルの許容電流で整理しています。電力・通信・防災用配線の共用は、設備ごとの分離条件やノイズ対策を確認し、セパレータを入れれば全ての条件が解決するとは考えません。
曲がりや盤への引込みでは、ケーブルの許容曲げ半径を満たす部材と空間が必要です。平面図の直線部だけでなく、立上り・上下の曲がりを断面で確認します。敷設時の張力、施工用の作業場所、更新時の引抜きも考慮します。
設計図に残す確認表
項目 | 図面・資料に残す内容 |
|---|---|
区間別の幅 | ケーブル仕様・条数・外径、有効幅、分離・増設の条件 |
荷重と支持 | 積載荷重、自重、支持間隔、支持材・定着、耐震条件 |
ルート | 高さ、曲がり半径、分岐、盤への引出し、建築設備との干渉 |
電気・防火 | 許容電流の条件、回路分離、接地・ボンディング、防火区画貫通 |
保守・施工 | 点検、ケーブルの追加・撤去、カバーの開閉、作業空間 |
幹線の電気的な条件は幹線設計と電圧降下計算と照合します。ラック幅・支持・電線選定の条件が変わったら、計算書と平面・断面図を一緒に更新できるよう記録を残しましょう。
参考資料
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版」第2編2.10.1・2.10.4。
- 農林水産省「電気設備施工技術指針 第4章」4-116の幅算定例。
- ネグロス電工「建築設備用支持材 地震対策関連商品 選定ガイドブック」。
資料確認日:2026年10月30日。幅・荷重の数値例は説明用の仮定であり、採用基準・最新製品資料と計画条件に合わせて検討します。