完成した設備図面と建物模型を並べた竣工図のイラスト
設備設計ナレッジ計画

竣工図とは|設計図・施工図との違いと設備竣工図に書くべき内容

竣工図は完成した建物・設備の状態を記録し、点検・故障対応・改修に引き継ぐ図面です。設計図・施工図との違い、電気・機械設備で残す情報、現場変更の反映例、完成図書の構成、CAD・PDF等の納品条件と受取り時の確認表を解説します。

猪

猪狩理

設備設計士

公開日
更新日

竣工図は、工事が完成した時点の建物や設備の状態を記録する図面です。設備の接続、配置、容量、配線・配管の経路等を残し、引渡し後の点検、故障対応、改修・更新に使います。公共工事の仕様書では「完成図」という名称も使われます。

設計図の表紙だけを竣工図に変更しても、施工中の変更が反映されていなければ維持管理には使いにくくなります。作成範囲・作成者・確認方法・提出形式は、契約図書と発注者の要求事項に基づいて着工前から整理します。

設計図・施工図・竣工図の違い

図面

主な役割

設備で見る内容

設計図

要求性能や設計意図、工事の対象を示す

方式、容量、系統、主要ルート、機器仕様、工事区分

施工図・製作図

施工・製作に必要な詳細を具体化する

寸法、支持、貫通、納まり、端子・結線、機器の製作仕様

竣工図・完成図

工事完成時の状態を記録して引き継ぐ

実際に採用した機器と接続、位置・経路、変更内容

この区分は役割を整理したものです。同じCADデータを段階ごとに更新する場合もありますが、どの版が承認された設計で、どの版が完成状態を記録したものかを区別します。担当範囲も一律に決めず、設計・施工・工事監理・発注者の契約上の役割を確認します。

国土交通省の公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版1.7.2では、完成時の状態を表現する図として完成図を位置付けています。これは官庁営繕工事の基準で、民間工事では採用する仕様書と納品条件を照合してください。

竣工図と完成図書は同じ範囲ではない

完成図書は、完成図に加え、保全・運用のために提出する資料をまとめた呼び方です。例えば取扱説明書、試験・測定記録、官公署への届出書類、試運転の報告等は、図面と関連させて引き継ぎます。必要書類は案件ごとに確定します。

図面上の「P-1」を機器一覧表・取扱説明書・試験記録の「P-1」と結び付けられるよう、機器番号をそろえます。説明書を一式受け取っていても、どの機器に対応するか分からなければ保守作業の手掛かりになりません。

電気設備の竣工図に残す情報

図書・情報

完成時に照合する点

単線結線図・幹線系統図

盤・変圧器・遮断器、接続先、幹線仕様、常用・非常用の区分

各階配線図

盤・器具位置、回路番号、配線ルート、立上り、隠ぺい部分の位置

盤図・回路表

回路名、負荷、遮断器、予備、盤内の構成

弱電・防災・監視の系統

端末番号、警戒区域・系統、連動先、他工事との接続

機器一覧・設定に関する資料

採用品の型式・定格・数量、必要な保護・制御設定と記録の所在

機器の位置を移した場合は、配線平面図だけでなく、幹線長や回路表、必要な計算書への影響も確認します。電源停止範囲を誤認しないよう、回路名と現地表示を対応させます。基本的な図書の関係は電気設備設計の流れと成果図書を参照してください。

機械設備の竣工図に残す情報

対象

完成時に残す内容

空調・換気

機器、ダクト、風量、吹出口、ダンパー、制御・連動、点検口

冷温水・給水・給湯

系統、機器・弁番号、管径、材質、接続、保温、測定・調整箇所

排水・通気

管径、勾配、管底高さ、立管、掃除口、桝、排水先

消防・排煙等

対象設備の系統、機器・弁、区画、連動と試験記録への対応

隠ぺい・埋設部分

位置を再確認できる寸法、高さ、基準点、施工写真等への参照

配管経路を線だけで残すと、天井を開けた際にどの高さを探すか分からない場合があります。更新や点検で必要な箇所は、通り芯・壁・床レベルなど基準が分かる寸法を残します。勾配と高さの読み方は配管図面の見方を参照してください。

変更反映の作例:盤の移設を一つの図面だけで終えない

仮想の事務所で、2階分電盤LP-2を廊下の反対側へ移し、幹線ルートが変更された例を考えます。変更内容を次のように追うと、図書間の更新漏れを確認できます。

変更事項

反映する図書

照合する根拠

LP-2の設置位置変更

2階配線平面図・盤配置詳細

最終施工図、現地確認、寸法記録

EPSから盤までのルート変更

幹線平面図・断面詳細

施工写真、竣工時のルート確認

幹線長が増加

幹線表・必要な電圧降下等の計算

変更後の長さ、ケーブル仕様

盤・回路番号を変更

系統図、盤表、現地ラベル

回路試験・表示照合の記録

機器更新で型式が変わった場合も、能力・消費電力・接続口径・制御信号等の影響を確認します。完成図は変更理由の詳細をすべて書き込む場所ではありませんが、根拠となる承認・変更記録へたどれるように整理します。

作成・確認・引渡しの進め方

  1. 着工時に納品条件を合意する。図面一覧、対象範囲、使用する基準、CAD・PDF・BIM等の形式、提出時期、確認者を決めます。
  2. 施工中に変更を記録する。現場の修正記入、質疑回答、承認図、写真を図面番号・機器番号と結び付けます。
  3. 隠れる前に位置を確認する。埋設や天井内の経路、高さ、接続、支持等を必要な方法で記録します。
  4. 完成状態へ反映する。採用品と最終ルートを図面・機器表・回路表へ反映し、不要な旧情報を整理します。
  5. 図面間と現地を照合する。系統、番号、数量、仕様、現地表示、試験結果が対応するかを確認します。
  6. 受渡し後に使えるか確認する。ファイルが開くか、図面目録から探せるか、管理者が停止・点検箇所を特定できるかを確かめます。

確認した内容と未確認の内容は区別します。既存の隠ぺい部分を調査していない改修工事では、推測を完成状態として確定せず、対象範囲や確認方法・限界が分かるように記載します。

CAD・PDF・BIMは、受け取る側の使い方に合わせる

閲覧用PDFと、更新に使う編集可能なデータでは役割が違います。必要な形式、ソフトの版、外部参照、フォント、座標や基準点、図面とモデルの対応等を、契約と発注者の運用に合わせて決めます。全案件で同じ形式・同じ提出部数が必須と考えないようにします。

国交省の営繕工事電子納品要領や電子納品運用ガイドライン(営繕工事編)は、電子成果品の仕様や受発注者の確認事項を整理しています。土木・道路・建築設計業務の要領を、営繕工事のものと取り違えず、案件に適用する版を確認します。

受取り時の確認表

  • 図面目録の枚数・番号・改訂日と、納品ファイルが一致している。
  • 系統図・平面図・機器表で、機器番号と採用仕様が一致している。
  • 変更した経路、管径、回路、制御が完成状態に反映されている。
  • 隠ぺい・埋設部分の位置と確認範囲が分かる。
  • 取扱説明書、試験記録、届出等の必要資料へたどれる。
  • PDFの縮尺・文字・印刷、編集データの外部参照や欠落を確認した。
  • 引渡し後の改修時に、誰が図面を更新・保管するか決まっている。

図面を受け取るだけでなく、故障時に電源・弁・系統を特定できるかまで試すと、足りない情報に気付きやすくなります。建物を使い始めてから行う変更も履歴として残し、引渡し時の竣工図と現状が混在しないよう管理します。

参考資料

資料確認日:2026年10月30日。変更例と確認表は説明用に作成しています。実際の成果品の範囲は契約図書・発注者との協議で確定します。