吹出口・吸込口の選定と気流計画|アネモ・ノズル・ふく流など種類別の特徴を解説
設備設計ナレッジ空調設備

吹出口・吸込口の種類と選定|アネモ・ノズル・風量・到達距離の見方

吹出口・吸込口の種類と役割を整理し、風量・面積・風速の計算、メーカー性能表の到達距離・圧損・騒音の読み方を解説。仮想オフィスの選定手順を使い、冷房・暖房・最小風量、梁や家具、還気経路、風量調整まで確認するポイントを示します。

長

長谷川一夫

機械設備設計部

公開日
更新日

吹出口は、空調機で処理した空気を室内へ届ける末端の器具です。吸込口は還気や排気などの経路への入口になります。選定では形状だけでなく、器具1個当たりの風量、到達距離、残風速、圧力損失、騒音をメーカーの性能資料で照合します。

室内の快適性は、器具の数や風量だけでは決まりません。冷房・暖房・最小風量の条件で、気流が梁や家具に遮られず、在室者へ強く当たらず、必要な範囲へ届くかを確認することが重要です。

吹出口・吸込口の役割と種類

吹出空気は周囲の空気を巻き込みながら、温度差や速度を変えて室内へ広がります。器具の名称と気流の分類を区別すると、カタログを読みやすくなります。例えば、アネモ型はふく流型の代表例であり、「アネモ」と「ふく流」は同じ階層の別方式ではありません。

代表的な器具

気流・形状の特徴

選定時の確認

アネモ型等のふく流吹出口

天井面に沿って周囲へ広げる構成など

水平・垂直の吹出設定、拡散範囲、冷暖房差、最小風量

ノズル・パンカルーバー等

方向を持たせて空気を遠くへ送る構成

到達距離、吹出角度、居住域への当たり方、騒音

線状・スロット吹出口

細長い開口から空気を送る

長さ・スロット数、方向、風量配分、窓や天井との位置関係

多孔パネル等

面として空気を供給する

面風速、均一性、給気の清浄度、対象室の要求

グリル・レジスター

格子・羽根を持つ器具

吹出用/吸込用、羽根方向、ダンパーの有無、有効面積

同じ形状名でも、メーカーや型式によって気流・性能は異なります。また、多孔パネルを使うだけでクリーンルームの要求を満たすわけではありません。フィルターや給気清浄度、気流方式、室の条件を合わせて判断します。

吸込口は還気・排気・移送の目的を確認する

還気口は空気を空調系統へ戻し、排気口は排気系統へ送ります。ドアガラリ等で別の区画へ空気を移す構成もあります。系統図や記号で、どの経路につながるかを確認してください。

吸込口は、開口の有効面積、通過風速、圧力損失、騒音、清掃性、還気経路を確認します。配置だけで遠くの吹出気流を思いどおりに引き寄せられると考えず、吹出しによる空気の広がりと合わせて計画します。

風量・面積・風速の関係

断面を通る平均風速v[m/s]は、風量V[m³/h]を断面積A[m²]と時間で換算して、v=V÷3,600÷Aで求めます。

仮に風量900m³/hが面積0.10m²の断面を通るなら、900÷3,600÷0.10=2.5m/sです。これは計算方法を示す仮定で、その断面の平均風速を表します。室内の人がいる位置の風速ではありません。

風速の表示

どこの値か

混同しないこと

ネック風速

ダクト接続部などの断面

器具の外形寸法から求めた面積と同じとは限らない

有効面積に基づく風速

メーカーが定義する有効な通過面積

外形面積や自由開口面積と無条件に置き換えない

気流中の残風速

吹出口から離れた特定の位置

到達距離を定義する条件とセットで読む

居住域の風速

人が通常いる領域

吹出口面やダクト内の風速ではない

器具寸法を決めるときは、その性能表がどの面積・風速を用いているかを先に確認します。単純な断面計算だけで、到達距離や騒音まで求めたことにはなりません。

性能表の到達距離・圧損・NC値を読む

到達距離は定義と温度条件をそろえる

到達距離は、気流が定められた残風速などの条件に達するまでの距離です。空研工業の技術資料では、残風速の異なる位置を最小・最大到達距離として扱う例が示されています。表中の「最大」が、部屋のどこまで快適性を保証するかを直接表すわけではありません。参考:空研工業「吹出口/吸込口 総合カタログ」技術資料

温度差のない等温条件と冷暖房条件、設置高さ、吹出方向、天井面の有無などを確認します。異なる条件で計算された到達距離同士を、そのまま比較しないようにします。

圧力損失と騒音は器具の前後条件も確認する

圧力損失は、空調機やファンに必要な静圧を計画する際に使います。器具・チャンバー・ダンパーのどこまで含むかを確認し、同じ損失を二重に加えないようにします。

NC値や騒音の表示は、風量、ダンパー開度、測定条件、室の吸音等の前提とともに読みます。器具1個の発生騒音が小さくても、複数器具やダクト・ファン等を合わせた室内騒音が目標を満たすかは別に確認します。

空調技研の性能計算も、風量・温度差・設置高さ等を入力条件として、到達距離、静圧損失、発生騒音、残風速を扱っています。外形寸法と風量だけで選ばず、使用条件をそろえることが基本です。参考:空調技研工業「気流分布図DXFデータダウンロードサービス」

冷房・暖房・最小風量の3条件を確認する

検討条件

気流を確認する概念

平面・断面で見る点

冷房

吹出口 → 天井付近の広がり → 居住域への下降

冷気が早く落ちて在室者へ当たらないか、梁で流れが変わらないか

暖房

吹出口 → 暖気の広がり・到達 → 室内の温度分布

上部だけが暖まり、床付近へ必要な熱が届かない状態にならないか

最小風量

風量低下 → 気流の広がり・到達の変化

定格時と同じ範囲へ届くか、冷気の降下や停滞が生じないか

矢印は確認の視点を示す概念で、特定製品の気流性能を表したものではありません。温度差、器具の設定、風量によって流れは変わります。空調技研の実験動画でも、標準的なアネモ型で風量を減らしすぎると気流ドロップが発生する例が示されています。参考:空調技研工業「各種動画」

0.5m/s以下だけで快適と判断しない

厚生労働省の建築物環境衛生管理基準には、対象となる建築物の居室の気流を0.5m/s以下とする基準があります。これは吹出口面の風速の上限や、あらゆる用途で不快感が生じない保証値ではありません。適用範囲と測定の位置を確認し、温度差・風の当たり方・作業内容等も考慮します。出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」

仮想オフィスで選定手順を確認する

天井高2.8m、設計送風量1,800m³/hのオフィスを仮定します。吹出口6個を候補とし、均等に分けるなら1個当たり300m³/hです。この段階で器具のサイズや配置が確定したわけではありません。

  1. 用途と負荷の違いを平面へ記入する:窓際、中央、会議室、在室者の位置を整理し、均等配分でよいか見直します。
  2. 候補器具の性能表に風量を当てはめる:300m³/hを処理する候補について、圧損、騒音、到達距離、設定方向を照合します。
  3. 冷暖房と最小風量を確認する:設置高さと温度差をそろえ、気流図・性能表で範囲を確認します。
  4. 器具数・サイズ・配置を調整する:梁、照明、感知器、間仕切り、家具、点検口との関係を確認します。
  5. ダクトと制御へ戻す:分岐、風量調整、必要静圧、操作するゾーンを対応付けます。

この仮定例は推奨の器具数・設計風量を示すものではありません。室ごとの負荷・使用条件の整理は空調ゾーニング、ダクトのサイズと静圧はダクト設計と圧損計算と合わせて検討します。

配置・吸込経路と竣工時の確認

吹出空気が必要な範囲を通らずに戻るショートサーキットを避け、還気・排気の経路が間仕切りや家具で塞がれないようにします。天井内を還気経路として使う場合は、防火区画や天井内の構成も確認します。外気を含む給気量と、還気・排気・移送のバランスは外気処理と全熱交換器の選定も参照してください。

竣工時は、器具の型式・向き・設定、実測風量、調整ダンパー、騒音、在室者付近の気流を計画と照合します。季節や負荷で条件が変わるため、測定時の運転モード・風量・温度差も記録すると、不具合の原因を追いやすくなります。

器具の形状を選び、風量と性能を照合し、最後に室内の気流と運用で確かめる。この順で確認すると、天井図だけでは見えない問題を整理できます。参考資料の確認日:2026年10月9日。