建設業の原価管理とは?やり方・項目・成功のポイントを基礎から解説
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建設業の原価管理をExcelで行う方法|表の作り方・計算式・運用ルール

建設業の原価管理表をExcelで自作するための4シート構成と入力列を解説します。工事番号・費目・基準日を条件とするSUMIFS、暫定原価の差替、重複チェック、残工事を含めた完成時予測まで、記入例と更新手順を示します。

与

与謝君惠

代表取締役

公開日
更新日

建設業の原価管理をExcelで行うには、工事番号でひも付けた明細を入力し、予算、発生済原価、残りの工事にかかる見込額を集計します。表を作る際は、計算式と同時に、入力する人、更新日、請求書が届いた後の修正方法まで決めることが必要です。

この記事では、4シートの構成、列と計算式、工事中の更新・照合を説明します。原価管理そのものの考え方は、建設業の原価管理の基礎をご覧ください。

Excelで原価管理を始める前に決めること

最初に、工事番号、費目、集計基準日、金額の単位、税込・税抜の扱いを統一します。以下は社内管理表の作成例で、法定の会計帳簿や申告書の様式ではありません。例では金額を税抜でそろえますが、自社の会計処理との対応も確認してください。

費目は材料費・労務費・外注費・経費を基本に整理できます。建設業情報管理センターの完成工事原価報告書の様式にもこの区分があります。ただし、労務外注費や経費内の人件費もあるため、支払先だけで機械的に分類せず、経理と現場で費目の対応表を決めます。

工事台帳・原価明細・残工事・集計の4シートを作る

工事ごとに別ファイルを増やすより、入力元をそろえ、工事番号で集計できる構成にすると照合しやすくなります。4シートの役割は次のとおりです。

シート

主な項目

役割

工事台帳

工事番号、契約額、工期、費目別予算、承認版

比較の基準を置く

原価明細

工事番号、発生日、費目、金額、根拠、状態

発生済みの原価を一明細一行で記録する

発注残・残工事

発注番号、発注額、発生済分、残数量・工数、単価

今後必要な原価を見積もる

工事別集計

基準日、予算、発生済原価、残工事、完成時予測

超過見込と利益見込を確認する

工事台帳の契約額は、承認済みの変更を反映し、当初額と変更履歴を残します。交渉中の追加工事代は確定額に混ぜず、別欄で管理します。予算も差異を消すために上書きせず、変更理由と承認者を記録してください。

原価明細の列と入力ルールをそろえる

次の列見出しで入力範囲を作り、Excelの「テーブル」として設定し、テーブル名を「原価明細」にします。後の数式はこの名前と列見出しを使います。行を追加した際もテーブルに含まれたかを確認します。

列

見出し

入力・確認する内容

A

明細ID

同じ原価を識別する一意の番号

B

工事番号

工事台帳と同じ番号を選択

C

発生日

管理上の原価発生日を日付で入力

D

費目

決めた名称から選択

E

発注番号

対応する発注。自社労務等は別の根拠で管理

F

原価金額

税区分をそろえた数値。例では円単位

G

状態

暫定/確定

H・I

根拠資料・請求番号

出来高、日報、納品・請求資料との対応

J・K

支払予定日・支払状態

発生とは別に、予定日と支払済/未払を記録

L・M

更新日・担当者

修正日と確認先を残す

原価の発生、請求書の到着、支払は別の出来事です。未払でも発生した原価は把握し、前払だけを理由に発生済原価へ入れないようにします。材料の使用や工事の出来高など、根拠と計上方法を経理とそろえてください。自社労務費は日報等の工数と自社の原価計算に沿った単価から集計します。

SUMIFSで工事別・費目別・基準日までの原価を集計する

以下は入力内容の仮想例です。表では集計に使う列を抜粋しています。

明細ID

工事番号

発生日

費目

原価金額

状態

R001

C001

2026/9/15

材料費

1,200,000

確定

R002

C001

2026/9/30

外注費

800,000

暫定

R003

C001

2026/10/5

材料費

100,000

確定

「工事別集計」シートのB1に基準日2026/9/30、A4にC001、B3に材料費を入力し、B4に次の式を置きます。基準日と発生日は文字列ではなくExcelの日付として入力します。

=SUMIFS(原価明細[原価金額],原価明細[工事番号],$A4,原価明細[費目],B$3,原価明細[発生日],"<="&$B$1,原価明細[発生日],">0")

この例の結果は1,200,000円です。10月5日の材料費は基準日より後なので含みません。「>0」は日付空欄等を集計しないための条件であり、空欄自体は照合時に解消します。式を別の費目・工事へ展開するときは、通常のコピー&貼り付けを使います。費目の行と工事番号の列に対応する参照を確認し、基準日の$B$1は固定します。横方向のオートフィルでは構造化参照の列が変わることがあるため、原価金額などの参照列も確認してください。

確定だけを条件にすると、請求書が未到着の原価を落とすおそれがあります。この式では暫定額も含めます。複数条件での集計と範囲の指定は、MicrosoftのSUMIFS関数の説明も参照してください。

暫定から確定への差替と、発注残の更新を連動させる

たとえばR002の出来高を80万円と仮計上し、後日同じ範囲の請求額が82万円と確認できた場合、80万円の行を残して82万円を追加すると二重計上になります。この表では、元の明細IDを保って金額を82万円、状態を確定へ修正し、旧額・理由・根拠・承認者を変更履歴に残す運用とします。

締め済み期間を修正する扱いは経理のルールに合わせます。基準日条件だけでは「当時把握していた金額」は再現できないため、月次の承認済み集計と明細を履歴として保存します。

発注残は、承認済み変更を反映した発注額から、同じ発注の発生済原価を除いた残りとして管理します。ここでは未払残とは区別します。出来高を原価に移したら対応する残額を減らし、請求確定時には発注額や残工事の見込みも確認します。発注総額を原価へ丸ごと加えないことが重要です。

完成時予想原価と粗利益を計算する

完成時の予測は、発生済原価に残工事の見込原価を加えて求めます。未発注の作業だけでなく、今後の自社労務費や現場経費も含めます。残数量・工数と単価、必要な期間を更新し、発注済みの範囲との重複を確認します。

項目

仮定額(万円)

算定・確認

契約額

1,000

承認済変更を反映

発生済原価

400

基準日まで。未払分も含む

発注済み・未発生分

350

上の400と重複しない残り

未発注残工事等の見込

150

今後の自社労務・現場経費を含む

完成時予想原価

900

400+350+150

完成時の予想粗利益

100

1,000−900。予想粗利益率10%

これは前の明細表とは別の、計算方法を示す仮想例です。1,000−400=600万円を完成時の利益とは扱えません。また、予算−発生済原価は未消化額であり、使ってよい余裕ではありません。予算と完成時予想原価を比べ、超過見込の費目と原因を確認します。

ここでの予想粗利益は工事全体の管理用予測で、会計上の当期売上・当期利益や手元資金とは異なります。会社全体の販管費等も別に確認します。対象ごとにコストを整理し利益を検討する考え方は、中小機構の収支シミュレーションの説明が参考になりますが、上の3区分は本記事の管理例です。

月次の照合とファイル管理を運用に組み込む

担当

確認する内容

残すもの

現場

出来高、残数量・工数、未請求の原価

根拠と見直し日

購買

発注・変更額と発注残、未手配の範囲

発注番号と変更履歴

経理

請求との重複、支払、税区分、会計との差

照合結果と差異理由

責任者

予算超過、未確定事項、対応期限

承認済み集計と次の対応

原価明細のテーブル内に確認列を加え、=COUNTIF(原価明細[明細ID],[@明細ID]) が2以上ならIDの重複を調べます。IDが異なる同一請求もあるため、取引先・請求番号・明細の範囲を照合し、重複候補を自動で削除しないようにします。

入力欄と数式欄を分け、計算式を保護します。正式ファイルの保管場所、編集権限、締め日、代理担当を決め、変更履歴とバックアップを残します。工事番号の空欄、文字列の金額、集計対象外の行も点検してください。

資金繰りへつなぎ、Excelを続ける条件を見直す

原価が分かっても、支払日が分からなければ資金繰りは予測できません。未払分と今後の支出予定を、実際の支払額・日付に直して建設業の資金繰り表へ渡します。支払済みの原価を将来支出へ再計上しないよう注意します。

Excelには自社の項目を調整しやすい利点がありますが、ライセンス、作表、教育、照合・保守の負担もかかります。共同編集や更新速度は運用によって変わります。権限管理、変更履歴、複数現場の集計、会計連携に負担が集中したら、原価管理システムの比較と選び方を参考に、必要な機能を整理しましょう。