建物模型と工事図面を前に、実行予算と原価実績を比較するイメージ
建設資金繰りナレッジ工事原価

建設業の実行予算とは?作り方と工事途中で赤字を見つける方法

建設業の実行予算の作り方と運用手順を解説。見積書との違い、工種別の予算設定、発生済み原価と残工事費用を使った完成時利益の計算例、月次確認の項目を紹介します。

与

与謝君惠

代表取締役

公開日
更新日

実行予算とは、受注した工事をどのような施工方法・調達条件・体制で進め、いくらの原価に収めるかを具体化した社内の計画です。作成後も、現場の進捗と残工事の見積りを更新して初めて、赤字の兆候を早い段階で把握できます。

この記事は、初めて実行予算を運用する建設会社向けに、着工前の作成から毎月の確認までを整理したものです。数値は説明用の仮定です。原価全体の基本は建設業の原価管理の基礎を参照してください。

見積書・実行予算・原価実績の役割

資料

主な目的

更新の考え方

見積書

発注者に工事範囲と価格を提示する

設計や条件変更時に見直す

実行予算

施工に必要な原価と目標利益を計画する

承認時の原本を保存し、改訂履歴を残す

原価実績

既に発生した費用を把握する

請求書未着の費用も合理的に見積もる

完成時見込

残工事まで含めた最終原価を予測する

現場の最新情報で定期更新する

提出した見積書の売価をそのまま原価予算にすることはできません。材料・労務・外注・経費ごとに、実際の調達価格や施工条件へ置き換えます。現場経費や自社作業員の費用をどこに含めるかも社内で統一します。

実行予算を作る5つの手順

1.対象範囲と前提をそろえる

契約図面、仕様書、見積条件、工程をそろえます。別途工事、支給材、搬入制限、夜間作業、廃材処分の担当を確認し、未確定事項には確認担当者と期限を付けます。図面の版が違うまま数量を拾わないことが重要です。

2.工種・工区ごとに数量と単価を積み上げる

配管、電気、内装など管理しやすい単位に分け、材料は数量×単価、作業は必要人工×社内で定めた原価単価で計算します。外注見積にはどの材料や作業が含まれるかを確認し、材工一式と自社手配分の二重計上を防ぎます。

3.現場経費と不確定要素を加える

運搬、仮設、機械賃借、現場管理などの費用を拾います。未確定の撤去範囲や工程延長などは、内容と見積根拠を示して管理します。理由のない一律の予備費だけでは、何を確認すれば精度が上がるか分かりません。

4.目標利益と照合して承認する

契約額から予算原価を差し引き、目標利益を満たすか確認します。不足する場合は施工手順や調達条件を具体的に見直し、必要な品質・安全・労務費を削って帳尻を合わせないようにします。営業、現場、購買、経理で前提を共有し、承認版を保存します。

5.予算項目と発注・原価の管理番号を合わせる

予算と請求書で工種名や工事番号が異なると、差額の原因を追えません。発注時から共通の番号を付け、追加変更には元の契約分と区別できる番号を設けます。

工事途中の赤字は「使った金額」だけでは分からない

仮に契約額1,000万円、承認時の原価予算800万円とします。下表の金額は税抜・万円で、発生済み原価には未払い分も含みます。残工事原価は、発生済み原価に入っていない今後の費用です。

費目

当初予算

発生済み

残工事見込

完成時見込

材料費

250

180

100

280

労務費

150

100

100

200

外注費

300

200

240

440

現場経費

100

50

50

100

合計

800

530

490

1,020

完成時見込原価=発生済み530万円+残工事見込490万円=1,020万円。工事の見込利益=契約額1,000万円−1,020万円=マイナス20万円です。支出や原価の累計530万円が予算800万円を下回っていても、最終的には赤字になる見込みです。ここでの利益は工事単位の管理値であり、本社経費等を控除した会社全体の利益とは異なります。

未施工の発注残は残工事見込に含めます。既に施工された外注費を発生済み原価に見積計上した場合、その金額を発注残から除きます。「発生済み+発注総額+残工事費」と足すと重複が生じるため、費用がどの欄にあるかを一意にします。

月次確認では差額の原因と次の行動を決める

確認する差額

調べる資料

次の行動の例

数量の増加

最新図面、施工数量、納品書

変更分を特定し、追加見積の担当と期限を決める

単価の上昇

当初見積、発注書、再見積

未発注分の影響を再計算し、調達条件を協議する

人工の増加

日報、工程、作業内容

手待ちややり直しの原因を除く

工期の延長

工程表、機械賃借契約

追加経費と請求・入金予定を更新する

当初予算を上書きして差額を消さず、「当初予算」「承認済み変更」「最新の完成時見込」を分けて残します。追加代金は、相手に提示しただけの金額と合意済みの金額を区別してください。未合意の増額を確実な利益として扱うと、赤字を見落とします。

変更工事の記録は追加工事の変更見積・指示記録で整理しています。

実行予算と資金繰り表は日付でつなぐ

原価が予算内でも、材料費の支払いが入金より先なら現金が不足します。月次確認では、残工事の費用に発注予定日・支払日を付け、出来高請求と入金の予定を並べます。原価の発生、支払い、売上計上、入金はそれぞれ別の出来事です。

未成工事支出金との関係は未成工事支出金と資金繰り、会社全体の残高予測は資金繰り管理の手順を参照してください。

まとめ:月次会議に残工事の見積りを持ち寄る

まず進行中の工事を1件選び、予算、発生済み原価、未施工の発注残、未発注の残工事費用をそろえます。会議では最新の完成時利益を確認し、差額の大きい項目について担当者・対策・期限を決めてください。完成後は差額の原因を次の見積りへ反映すると、実行予算の精度を改善できます。

参考資料・確認日

公表資料の確認日:2026年9月25日。制度の利用可否や手続きは各公式窓口で最新の条件をご確認ください。

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