BIMとCADの違いを設備設計目線で整理|使い分けと移行判断
CAD/BIMナレッジ導入

CADからBIMへ移行すべき?設備設計の使い分けと導入判断のポイント

設備設計でCADからBIMへ移行するかは、案件規模だけでなく納品要件、既存資料、調整範囲、担当体制から判断します。全面導入・部分導入・CAD継続を選ぶ表と想定例、併用時の正本管理、試行案件で確認する項目をまとめます。

長

長谷川一夫

機械設備設計部

公開日
更新日

CADからBIMへ移行するかは、納品要件を満たしたうえで、どの業務の判断・情報共有にBIMを使うかで決めます。建物の大小だけで区分せず、既存資料の確かさ、調整相手、作業時間、確認体制まで含めて、全面導入・部分導入・CAD継続を選びましょう。

ここでは設備設計事務所が案件の採否や適用範囲を決めるための考え方を整理します。ソフトの機能差はBIMと2D・3D CADの比較を参照してください。

まず発注者の納品要件を確認する

最初に確認するのは「BIM案件か」という呼び方ではなく、必要な成果物です。PDF・CAD図面の提出に加え、編集可能なモデル、IFC、機器表、属性一覧のどれを求められているかを確認します。モデルを納める場合は、用途、対象工種、作成範囲、ソフトと版、受領側の確認方法も必要です。

国土交通省の官庁営繕ではEIR(発注者情報要件)を適用したBIM活用を進めています。個別案件では契約図書の要件を確認し、受注側のBEP(BIM実行計画書)などで作業内容を対応させます。民間案件を含め、全案件に同じ提出条件があると解釈しないでください。国土交通省:官庁営繕事業におけるBIM活用

要求が曖昧なまま「3Dで作っておく」と、後から必要属性や成果物が増えます。見積前に、モデルを誰が何に使うか、追加要求を誰が承認するかまで文書に残すことを勧めます。

5項目で使い分けを判断する

次の表は本記事の判断用チェック表です。点数の合計で自動判定するものではありません。納品要件が必須なら、それを満たせる体制の確保が先になります。

判断項目

BIMの適用を検討しやすい条件

先に解消したい条件

納品要件

モデル・属性の納品や継続利用がある

対象範囲や受入基準が未合意

既存資料

座標と現況を確認したモデルを利用できる

古い図面しかなく現況との差が不明

調整密度

天井内・機械室など立体的な検討が多い

相手のモデル版や検討対象が不明

担当体制

入力担当、設計確認者、応援担当を決められる

操作できる一人に入力と判断が集中する

変更頻度

同じ情報を図面・集計に繰り返し使う

CAD側とモデル側の修正責任が曖昧

既存BIMがあっても、そのまま設計の根拠にできるとは限りません。現況との対応、欠落設備、更新日、属性の意味を調べる時間を見積もります。逆にCAD図面しかなくても、改修範囲の機械室だけをモデル化して搬入・保守空間を検討する選択肢があります。

国の標準ワークフローガイドライン第3版も、目的や情報管理コストに応じて他の手段を使う選択肢を示しています。全工程でBIMを使うこと自体を達成目標にせず、必要な情報を関係者が使えるかで判断します。建築BIM推進会議:ガイドライン第3版

CADとBIMを併用するなら正本を決める

併用では「正式な変更元はどれか」を情報ごとに決めます。BIMから書き出したCADを修正し、その内容がモデルに戻らないまま次版を発行すると、同じ設備に異なる位置や寸法が残ります。

対象

正本とする情報の例

変更時の扱い

モデル化した主幹ルート

BIMモデルの位置・寸法

モデルを修正し、図面を再出力する

標準詳細や特記仕様

管理対象のCAD・文書

モデルの対象部位と仕様の整合を確認する

BIM対象外の改修区画

現況確認済みCAD図面

対象境界に変更があればモデル担当へ通知する

発行図書

承認済み版のPDF等

作業中データと区別し、発行記録を残す

これは運用例です。契約上の成果品の位置付けとは別に、チーム内で参照する変更元を明確にします。表の担当者、共有日、図面番号・モデル版を案件開始時に埋めておくと、修正依頼の行き先が分かります。

全面導入・部分導入・継続の判断例

次は説明用の想定例であり、実案件の成果を示すものではありません。

想定条件

選び方の例

着手前の確認

設備モデル納品が必須で、意匠・構造と定期調整する新築

契約範囲をBIMで作成する体制を組む

属性要件、調整頻度、外注を含む確認責任

図面納品の改修だが、機械室の搬入経路が課題

機械室と経路に限定してBIMを併用

現況調査、モデル化境界、必要な余裕寸法

図面納品のみで変更範囲が限定され、既存モデルもない

CAD継続を候補にし、立体検討の必要性を確認

調整漏れのリスク、追加BIM要望の有無

大規模でもモデルの利用者や更新責任が決まっていなければ、作成負担だけが増える可能性があります。小規模でも狭い空間に複数設備が集中すれば、限定したBIM活用が判断材料になります。

試行案件で適用範囲を決める

最初の試行は「一棟を完成させる」より、担当者と確認者を確保できる一つの用途から設計します。例えば、主幹ダクトの調整と断面図の作成までを範囲にし、CADとの比較条件を揃えて記録します。

  • 入力・確認・修正・データ受渡しにかかった時間を分ける。
  • 未解決課題と、その原因が情報不足・操作・設計判断のどこにあるかを残す。
  • モデルからの出図と、別管理する注記・仕様の確認漏れを調べる。
  • 担当者が不在でも変更できるか、別の担当者が再確認する。

工数だけでなく納品品質と調整の成立を確認し、再利用できるルールができた範囲から次の案件へ広げます。効果を見込む条件はBIM導入のメリット・デメリットで整理しています。

導入範囲を決めた後の教育、テンプレート、工程と費用の組み立ては、CADからBIM(Revit)への移行手順へ進んでください。まず一案件の要求と担当体制を紙一枚にまとめると、自社が今BIMへ移す業務を具体化できます。